◆不毛地帯
2009年10月15日からフジテレビ系列で放映。
大本営参謀のエリートとして活躍し、ソ連軍によって11年もの間シベリアの強制収容所で抑留された男が、戦後総合商社マンとして世界を相手に戦う様子を描いたヒューマンドラマ。
主演は、ドラマ「白い巨塔」に続いて6年ぶりに山崎豊子作品で主役を務める唐沢寿明。このほか女性陣からは、和久井映見、多部未華子、小雪、天海祐希らが登場する。
⇒不毛地帯 動画 (最終回の結末に注目!)
◆不毛地帯の主題歌
坂本龍一
◆不毛地帯の出演者
壹岐 正 ...... 唐沢寿明
壹岐佳子 ...... 和久井映見
壹岐直子 ...... 多部未華子
壹岐 誠 ...... 高橋平
川又伊佐雄 ...... 柳葉敏郎
貝塚道生 ...... 段田安則
芦田国雄 ...... 古田新太
谷川正治 ...... 橋爪功
竹村 勝 ...... 中丸新将
秋津紀武 ...... 中村敦夫
秋津精輝 ...... 佐々木蔵之介
秋津千里 ...... 小雪
久松清蔵 ...... 伊東四朗
田原秀雄 ...... 阿部サダヲ
浜中紅子 ...... 天海祐希
鮫島辰三 ...... 遠藤憲一
大門一三 ...... 原田芳雄
里井達也 ...... 岸部一徳
兵頭信一良 ...... 竹野内豊
松本晴彦 ...... 斉木しげる
小出 宏 ...... 松重豊
海部 要 ...... 梶原善
塙 四郎 ...... 袴田吉彦
◆不毛地帯のスタッフ
脚本:橋部敦子
演出:澤田鎌作、平野眞、水田成英
音楽:菅野祐悟
プロデューサー:長部聡介、清水一幸
制作:フジテレビドラマ制作センター
制作著作:フジテレビ
◆不毛地帯の視聴率
| 各話 |
放送日 |
サブタイトル |
視聴率 |
| 第1話 |
2009年10月15日 |
戦争・家族・友情・涙そして運命の恋...激動の物語 |
14.4% |
| 第2話 |
2009年10月22日 |
黒い頭脳戦 |
11.1% |
| 第3話 |
2009年10月29日 |
妻と娘の涙 |
11.6% |
| 第4話 |
2009年11月5日 |
俺が殺した |
9.9% |
| 第5話 |
2009年11月12日 |
不毛地帯 |
11.8% |
| 第6話 |
2009年11月19日 |
決戦 |
10.7% |
| 第7話 |
2009年11月26日 |
妻との誓い |
10.6% |
| 第8話 |
2009年12月3日 |
愛妻の死! |
11.4% |
| 第9話 |
2009年12月10日 |
哀しい女 |
10.9% |
| 第10話 |
2009年12月17日 |
恋と野望 |
10.8% |
| 第11話 |
2010年1月14日 |
嫉妬に殺される男 |
12.1% |
| 第12話 |
2010年1月21日 |
裏切りの極秘調査 |
11.8% |
| 第13話 |
2010年1月28日 |
喰うか喰われるか |
12.2% |
| 第14話 |
2010年2月4日 |
百億の賭け |
10.2% |
| 第15話 |
2010年2月11日 |
邪魔者は消えろ! |
11.6% |
| 第16話 |
2010年2月18日 |
地獄からの招待状 |
10.7% |
| 第17話 |
2010年2月25日 |
暗号と密約 |
11.8% |
| 第18話 |
2010年3月4日 |
汚れた英雄 |
12.0% |
| 最終回 |
2010年3月11日 |
|
% |
◆不毛地帯のあらすじ 最終回 ネタバレ注意!
第1話「戦争・家族・友情・涙そして運命の恋...激動の物語」のあらすじ
陸軍士官学校を首席で卒業し、第二次大戦中は軍の最高統帥機関である大本営の参謀として作戦立案にあたっていた壹岐正(唐沢寿明)は、終戦を受け入れず、日ソ中立条約を破って侵攻してきたソ連軍に対する徹底抗戦を主張する関東軍を説得するため、停戦命令書を携えて満州に向かった。
そこで、関東軍の幕僚・谷川正治(橋爪功)らとともにソ連軍に拘束された壹岐は、戦犯としてソ連の軍事裁判にかけられ、強制労働25年の刑を宣告されると、一度送られたら二度と生きて帰ることはできないといわれたシベリア極北の流刑地ラゾに送られてしまう。
生死の境をさまよう過酷な強制労働を11年もの長きに渡って耐え抜いた壹岐は、昭和31年に帰国する。それからの2年間、壹岐は、強制労働によってむしばまれた体の回復と、シベリアから一緒に帰国した部下たちの就職の世話に専念した。その間は、妻の佳子(和久井映見)が大阪府庁民生課で働きながら家計を支えていた。
そんなある日、壹岐のもとに、士官学校時代からの親友で、防衛庁の空将補である川又伊佐雄(柳葉敏郎)がやってくる。川又は、この国を守るために一緒に働いてほしい、と壹岐を防衛庁に誘った。しかし壹岐は、自らが関わった作戦により、多くの兵士や民間人を死なせてしまった責任から、もう国防に関わる資格はない、と答えて川又の誘いを断った。
壹岐は、部下たちの就職が片付いたのを機に、かねてから誘われていた近畿商事への就職を決意する。近畿商事は繊維を中心に扱う商社だが、経済の発展を見越して、重工業化・国際化を推進しようとしていた。社長の大門一三(原田芳雄)に会った壹岐は、軍人時代のコネや肩書きを一切利用しないことを条件に、近畿商事に入社し、社長室嘱託として繊維部で働き始める。それを知った壹岐の長女・直子(多部未華子)は大喜びだった。母・佳子の苦労する姿をずっと見続けてきた直子は、二度と戦争には関わらないでほしいと願い、壹岐が防衛庁で働くことにも強く反対していたのだ。
そんな折、壹岐のもとに、秋津千里(小雪)という女性から手紙が届く。千里は、大陸鉄道司令官だった秋津紀武(中村敦夫)の娘だった。壹岐と秋津は、シベリア抑留中に、ソ連側の証人として東京裁判に出廷させられようとしていた。ソ連側は、壹岐や秋津に、天皇に戦争責任があったと証言させようとしたのだ。だが秋津は、それを断固拒否し、裁判の前夜、自ら命を断っていた。
壹岐は、父の話が聞きたいという千里の願いを受け、彼女が住む京都を訪れる。千里は、父が大事にしていた青磁の香炉にみせられ、陶芸の道に進んだのだという。そこで壹岐は、千里の兄・清輝(佐々木蔵之介)が、ルソン島で多くの部下を死なせてしまった責任に苦しみ、仏門に入って厳しい修行を続けていると知って衝撃を受ける。
そのころ、国内の有力商社各社は、防衛庁の第2次防FX=次期主力戦闘機の受注をめぐって水面下で激しい戦いを繰り広げていた。航空機部を置く近畿商事東京支社の支社長・里井達也(岸部一徳)は、劣勢を跳ね返すための切り札として、川又ら防衛庁の空幕中枢部と強いパイプを持つ壹岐が必要だと大門に進言する。
大門に同行し、東京支社を見学した壹岐は、その晩、谷川の自宅を訪ねる。壹岐正同様、生きて日本に戻ることができた谷川は、シベリアからの帰還者を支えるための組織を作り、就職の世話や、遺骨、遺品等を遺族に届ける活動に残りの人生をささげようと決意していた。
あくる日、東京支社の鉄鋼部を訪れた壹岐は、そこで兵頭信一良(竹野内豊)と出会う。兵頭は、陸軍士官学校の出身だった。その晩、兵頭は、壹岐をクラブ『ル・ボア』に連れていく。近畿商事でやりたい仕事を実現させるためには壹岐が必要だった、と喜ぶ兵頭。兵頭は、その計画が何であるかは口にしなかったが、それは会社にとって、そして日本の将来にとって必要なことだと壹岐に告げる。そこにやってきたのは、『ル・ボア』経営者の娘で、ピアノを弾きながら歌を歌っていた浜中紅子(天海祐希)だ。紅子は、生真面目な壹岐に何故か興味を持ったようすだった。
大阪に戻った壹岐は、大門から、アメリカ出張に同行するよう命じられる。新体制を整えたアメリカ近畿商事のお披露目パーティーがあるのだという。慣れない商社の仕事に戸惑っていた壹岐は、英語が得意ではないということもあってその話を断ろうとした。すると大門は、敗戦の原因は、壹岐たちのような作戦参謀が敵であるアメリカを知らなかったことだと言い放ち、経済戦争においてアメリカは最大の敵にも味方にもなる、と続けて壹岐を黙らせた。
繊維部に戻った壹岐は、千里の訪問を受ける。千里は、清輝から、防衛庁の戦史室で役立つのなら、と、父・紀武が日中戦争について書いた回想録を託されたのだという。戦史室に知り合いがいる壹岐は、千里からそれを預かった。その際、千里は、父のお参りにきてくれたお礼だといって、自作の青磁の花器を壹岐に手渡す。
大門とともに渡米した壹岐は、ニューヨーク支店繊維部の海部要(梶原善)に同行し、日本の繊維業界が置かれている状況の一端を垣間見る。その夜、ホテルでは近畿商事主催のパーティーが開かれた。海部によれば、こうしたパーティーも情報収集のための場なのだという。
別の日、壹岐は、ロサンゼルス支店・塙四郎(袴田吉彦)の案内で、ラッキード社を訪れ、F104を目の当たりにする。その機体構造に強い興味を抱いた壹岐は、テスト・フライトを見るために、コントロールタワーに向かった。するとそこにいたのは、川又たち防衛庁の調査団だった。川又たちは、ラッキードF104の性能を調査しに来ていたのだ。
その夜、壹岐は、大門とともにロサンゼルスの日本料亭を訪れる。そこで壹岐は、今回の出張は、最初から川又と自分を引き合わせるためのものだったのではないかと大門に迫った。すると大門は、テスト・フライトに防衛庁の調査団が来ることは知っていたが川又がいたのは偶然に過ぎない、と返す。そこに川又がやってくる。川又は、2次防の候補機のうち、最有力候補はテスト・フライトでも優れた結果を出したラッキードF104だと大門たちに告げた。だが、このままでは、グラントのスーパードラゴンに決定される可能性が高い、と続ける川又。
グラントを推す東京商事の航空機部部長・鮫島辰三(遠藤憲一)が、防衛庁の権力を握っている官房長の貝塚道生(段田安則)を味方に引きこみ、総理派の人間にも金をばらまいているのだという。川又は、戦闘機は政治家の利権のためではなく、国を守るためにあるべきだと主張し、力を貸してほしいと壹岐に告げる。その言葉を受け、大門も、航空機部に移って力を発揮してみてはどうかと壹岐に言った。しかし壹岐は、それだけはできないと言い残して席を立ってしまう。
壹岐の後を追った川又は、外部から働きかけることができる商社の力が必要だ、と改めて訴えた。国を守り、2度と戦争をしないために、させないためにラッキードF104が必要だ、と――。
川又の言葉に心を動かされた壹岐は、帰国後、大門に航空機部への異動を願い出る。「2度と同じ過ちを犯さないように国を守り、発展させていくこと、それが私の使命です」。壹岐は、強い決意を胸に、大門にそう言った。
第2話「黒い頭脳戦」のあらすじ
防衛庁の第2次防FX(=次期主力戦闘機)の受注が、国のためではなく、政治家の利権のために利用されていることを知った壹岐正(唐沢寿明)は、軍人時代の人脈を利用しないという自らの申し出を撤回して、社長の大門一三(原田芳雄)に東京支社航空機部への異動を申し出る。昭和34年7月のことだった。
第2次防FXの有力候補は、近畿商事が押すラッキード社のラッキードF104と、東京商事が推すグラント社のスーパードラゴンF11の2機だった。だが、東京商事航空機部の鮫島辰三(遠藤憲一)による裏工作によって、グラント社のスーパードラゴンF11が有利な状況にあった。
近畿商事東京支社長・里井達也(岸部一徳)は、壹岐に航空機部部長の松本晴彦(斉木しげる)を紹介すると、小出宏(松重豊)という男を壹岐の下につけた。小出は、防衛庁空幕の調査課出身なのだという。壹岐たちは、グラント社から総理側にG資金と呼ばれる巨額の賄賂が渡っていることをつかんでいたが、金の流れまではいまだ解明できていなかった。そのすべてを演出している鮫島は、すでに壹岐が近畿商事の航空機部に異動してきたことまでつかんでいた。
壹岐は、防衛庁の川又伊佐雄(柳葉敏郎)から、ラッキードF104の優秀性が記載された自衛隊調査団の報告書が、官房長の貝塚道生(段田安則)によって握りつぶされてしまったとの情報を得る。そこで大門は、自由党総務会長で反総理派の大物、大川一郎(亀石征一郎)の力を借りようとする。
同じころ、秋津千里(小雪)は、師匠の叶頼山(品川徹)に認められ、陶芸新人展に作品を出すよう命じられていた。
その夜、壹岐の家に、毎朝新聞の政治部記者・田原秀雄(阿部サダヲ)が訪ねてくる。田原は、壹岐が防衛庁入りの話を蹴って近畿商事に入社したのは、商社サイドからラッキードF104を推すためではないのか、などと言い出す。防衛庁担当である田原は、最近、壹岐に関する怪文書をよく目にするようになったのだという。壹岐は、佳子(和久井映見)のことを気にしながらも、田原の推測を否定した。すると田原は、川又が西部航空方面隊に左遷されるという噂を耳にした、と壹岐に告げる。
壹岐は、すぐさま川又に電話を入れた。川又によれば、新聞記者を使って噂を流し、圧力をかけるのは貝塚がよく使う手らしい。川又は、貝塚が握りつぶした報告書の存在を明らかにしなければならない、とその重要性を訴えた。
そんな折、一度は国会で貝塚を喚問すると約束した大川が、急に態度を変えた。鮫島が大川に金を渡したのだ。そこで壹岐は、総理の側近で国防会議の重要メンバーでもある経済企画庁長官の久松清蔵(伊東四朗)に会いに行く。壹岐は、久松とは旧知の仲だった。久松は、2次防がグラントに決まったこと、総理にはスーパードラゴン1機分ほどの金が渡っていることなどを壹岐に伝えた。それに対して壹岐は、ラッキードF104の調査報告書が貝塚によって握りつぶされたこと、さらにスーパードラゴンが実はたった2機の試作機しかなく、実戦では使われていないことを久松に訴えた。
壹岐は、小出とともに、グラント側から総理派に送金されている通称『G資金』のルートを追い始める。やがてふたりは、G資金の円転換が主に京浜銀行で行われていることをつかみ、匿名で大蔵省に告発文を送りつける。
ほどなく、京浜銀行には大蔵省銀行局の機動検査が入った。それにともない、国防会議も当分の間、延期されることになった。貝塚からそれを聞かされた鮫島は、壹岐の仕業だと直感していた。
ロスに飛んでいた里井は、ラッキード側と交渉し、総理がラッキード支持に変わるための大義名分として、1機あたりの値下げ交渉を進めていた。壹岐は、グラントの価格見積表を入手し、それをラッキード社に提示して新たな見積表を作成させるべきだと提案した。
壹岐から、グラントの価格見積表が必要だと聞かされた小出は、その役割を買ってでた。川又の部下でもある防衛庁の芦田国雄(古田新太)に接触した小出は、機密書類扱いになっている見積表を入手することに成功し、それを複写した。それは、防衛庁内でも10人にしか配られていないもので【3/10】と数字が打たれていた。小出は、その数字が映らないように芦田からも念を押されていた。
そのころ川又は、貝塚に呼び出され、来年1月の人事で、西部航空方面隊の司令官に赴任するよう命じられる。貝塚の真意を理解した川又は、2次防に関わった防衛部長として、次期戦闘機が未決定のまま空幕を離れるわけにはいかない、と主張し、抵抗した。しかし貝塚は、すでに川又の後任に内示を与えているのだという。川又は、自らの出世と保身しか考えていない貝塚に怒りをぶつけ、このまま引き下がるつもりはない、と言い放つ。
その夜、壹岐は、美術館で開かれている新人陶芸展を見に行く。千里の作品が入賞したのだ。そこで壹岐は、久しぶりに千里と再会を果たしていた。
あくる日、壹岐は、小出が入手したグラントの価格見積表を里井に手渡す。里井は、さっそくロスに飛んで、ラッキードに価格の再検討をさせるつもりでいた。
仕事を終えた壹岐は、兵頭信一良(竹野内豊)に誘われて、クラブ『ル・ボア』を訪れる。すでに兵頭も、2次防におけるラッキードの巻き返しは壹岐の力によるものであることを知っていた。するとそこに、浜中紅子(天海祐希)がやってきた。紅子は、帰ろうとする壹岐を引きとめると、家に電話を入れるといって席を立った彼をからかってみせる。
佳子に電話をした壹岐は、里井から何度も電話があったことを教えられる。緊急の用事だという。壹岐は、すぐさま会社に電話をした。そこで里井は、ラッキードF104がエドワード空軍基地でのテスト・フライト中に墜落したことを壹岐に伝える。墜落の原因は不明だった。
同じころ、ラッキードF104の墜落事故を知った鮫島は、毎朝新聞の田原に電話を入れていた。この事故は、一夜にして世界中を駆け巡り...。
第3話「妻と娘の涙」のあらすじ
防衛庁の第2次防FX(=次期主力戦闘機)受注をめぐり、激しい戦いを繰り広げていた壹岐正(唐沢寿明)は、東京商事航空機部の鮫島辰三(遠藤憲一)が総理に流していた賄賂『G資金』のルートを解明するとともに、防衛庁から極秘文書であるグラント社のスーパードラゴンF11の価格見積表を入手する。これによって、ラッキード社のラッキードF104を推す壹岐たち近畿商事が勝利するものと思われた。
ところがその矢先、アメリカの空軍基地でテスト・フライト中だったラッキードF104が墜落事故を起こすという事態が発生した。近畿商事社長の大門一三(原田芳雄)は、一刻も早く墜落の原因などの詳しい情報を集めて対策を練るよう、東京支社長の里井達也(岸部一徳)に命じた。
同じころ、鮫島は、防衛庁官房長の貝塚道生(段田安則)に、ラッキードF104の欠陥データと墜落現場の写真を入手したことを報告していた。すでにそれらは、毎朝新聞記者の田原秀雄(阿部サダヲ)の手に渡っていた。
田原は、さっそく防衛庁の川又伊佐雄(柳葉敏郎)に取材を申し込んでいた。田原は、米軍の名パイロットでも事故を起こすような戦闘機を、日本のパイロットが乗りこなせるのか、などと川又に聞いてきたらしい。それを知った壹岐は、田原が握っているデータを把握するために、自ら彼に接触した。そこで田原は、ラッキードF104には致命的な欠陥がある、と壹岐に告げる。壹岐が会いにきたことで、彼が近畿商事の影の航空機部部長であることを確信した田原は、明日の朝刊を楽しみにしていてほしい、と言い残して去っていく。
その夜、壹岐は、旧知の仲である経済企画庁長官・久松清蔵(伊東四朗)を訪ねる。壹岐は、毎朝新聞の件を伝え、どうにかして記事を抑える策はないか、と久松に頼みこんだ。久松は、「君にも泥水を飲んでもらわなければならないよ」と壹岐に告げた。
一方、鮫島は、とあるクラブで壹岐の部下・小出宏(松重豊)が、防衛庁の芦田国雄(古田新太)の接待をしていることを知り、領収書の写しなどを入手していた。
全日本遺族会の名誉会長でもあった久松は、毎朝新聞と全日本遺族会が護国寺の国有地払い下げで争っていることに目をつけ、ラッキード機の事故を記事にしないことを条件に土地を渡すと持ちかける。久松から、記事が止まりそうだという連絡を受けた壹岐は、さっそくそれを里井に報告した。
ところがその翌朝、毎朝新聞ではなく東都新聞に、ラッキードF104の欠陥を訴える記事が掲載されてしまう。田原が、東都の記者にスクープを譲ったのだ。壹岐のもとにやってきた田原は、ライバル紙であろうと記事を出すことが最優先だと言い放ち、元軍人でありながら遺族会を犠牲にした、と壹岐をなじった。
東都新聞の記事を受け、近畿商事には新聞各社からの電話が鳴り響いていた。そこで壹岐は、事態を鎮静化させるために、ラッキード社のブラウン社長を来日させ、記者会見を開こうと提案する。
緊急来日したブラウン社長は、記者会見の席上で、事故原因が操縦ミスであること、そして、致命的な欠陥だと報じられた機首反転時のキッカーの作動はパイロットの命を守るものであることを訴えた。ラッキードF104の性能に対する疑惑を逆手にとって、その安全性をアピールするという壹岐のシナリオ通りの展開だった。
あくる朝、貝塚の元を訪れた鮫島は、大門とブラウン社長が記者会見後に総理を訪ね、次期戦闘機がラッキードF104に決定すれば対米貿易に関する規制緩和などを考慮するという米大統領からの添書を手渡したことを教えられる。そこで鮫島は、ラッキードF104に決定という流れを覆すべく、力を貸してほしいと貝塚に相談を持ちかけた。
芦田をマークしていた鮫島は、彼が近畿商事の株を手にしたことをつかんでいた。芦田から防衛庁の機密情報を入手する際、住宅購入の頭金をせびられていた小出は、里井の指示を仰ぎ、株券を渡していたのだ。
ほどなく、芦田は警務隊に連行された。小出からその情報を入手した壹岐は、里井や航空機部部長の松本晴彦(斉木しげる)と対策を協議する。壹岐は、捜査の手を逃れるために海外出張させてほしい、と焦る小出に、近畿商事が使用していた六本木のマンションを整理し、機密文書をコピーした複写機も隠すよう指示する。
芦田の証言で、小出も警察に拘留された。久松の元を訪れ、今回の事態を詫びる壹岐。久松は、近畿商事の株から足がつくという失態を非難しつつも、迅速に手を打たなければならないと告げる。そこに、鮫島が訪ねてきた。久松は、鮫島に会おうとはしなかった。すると壹岐は、鮫島に会ってグラント側の動きを探ってほしい、と久松に頼む。
久松の前に通された鮫島は、手土産として多額の現金を差し出すと、国防会議ではグラントのスーパードラゴンF11を推してほしい、とストレートに頼み込んだ。
帰宅した壹岐は、小出の件を知った妻・佳子(和久井映見)から、何か起きているのかと問われる。そんな佳子をつい怒鳴りつけてしまう壹岐。その声を聞いてやってきた直子(多部未華子)は、壹岐がシベリアに抑留されていた11年もの間、自分たちの前では絶対に涙を見せず、ひとりでこっそり泣いていた母への思いから、「どんなことがあってもお母さんを大切にしてあげて!」と必死に訴えた。
近畿商事は、防衛庁の機密漏えい事件はあくまでも小出が独断でやったものであると押し通そうとしていた。それを知った小出は、本当に卑怯なのは壹岐正だ、と暴露する。それを受け、捜査当局は事件の中心人物を壹岐正だと断定し、任意での出頭を求めるが...。
第4話「俺が殺した」のあらすじ
壹岐正(唐沢寿明)は、防衛庁から近畿商事に流れた機密漏えい事件に関して、警視庁捜査二課から任意での出頭を求められる。壹岐は、防衛庁の第2次防FX(=次期主力戦闘機)の受注をめぐり、部下の小出宏(松重豊)にライバルであるグラント社の価格見積表を入手させた。その機密書類の出所は、川又伊佐雄(柳葉敏郎)の部下である防衛庁の芦田国雄(古田新太)だった。芦田とともに逮捕された小出は、会社側からトカゲの尻尾切りにあったことを知り、悪いのは壹岐だと証言していた。捜査当局も、すでに今回の事件の中心人物は壹岐だと断定していた。
近畿商事東京支社長・里井達也(岸部一徳)に電話を入れた壹岐は、任意出頭を求められたことを報告する。里井は、今回の件はすべて小出が独断でやったもので、近畿商事側には機密書類の類は一切ないと突っぱねるよう念を押した。
壹岐が警察に出頭したという情報は、防衛庁官房長の貝塚道生(段田安則)を通じて、東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)にも伝わっていた。鮫島は、ラッキード社派の政治家が今回の機密漏えい事件をもみ消すのではないかと危惧していた。すると貝塚は、検察庁が決定的な物証を得ている以上、捜査の打ち切りはない、と断言する。
出頭した壹岐は、警視庁捜査二課長の井上(藤木孝)の追求に対し、機密書類漏えいに関する近畿商事の関与や、小出への指示などを全面否定する。だが、井上ら捜査当局は、小出が隠した複写機の場所や、経済企画庁長官・久松清蔵(伊東四朗)の関与などもつかんでいた。その際、壹岐は、漏えいしたグラント社の価格見積表が、実は川又のものであったことを教えられる。それでも壹岐は、最後まで書類の存在を否定し続けた。
ところが、壹岐が会社に戻ってみると、状況が大きく変わっていた。すでに、大門一三(原田芳雄)は里井に対し、防衛庁から入手した書類をすべて捜査二課に提出するよう指示していたのだ。事態を収拾するために久松と自由党幹事長の三島(神山繁)が動き、近畿商事が入手した書類をすべて提出することで、検察庁と防衛庁の貝塚官房長を抑えたからだった。しかも、近日中に国防会議が非常招集され、第2次防FXはラッキードF104に正式決定することになっているのだという。
それを聞いた壹岐は、書類の提出はもはや形式的なものであることは明らかだとし、提出する書類の取捨選択をさせてほしい、と大門に願い出た。書類の中には、防衛庁のどこから流れたのかがわかってしまうものがあるからだ。しかし大門は、すでに防衛庁の警務隊が漏えいした書類をすべて把握していることを理由に、断固としてそれを許可しなかった。
今回の事件で、第2次防FXは、グラントのスーパードラゴンF11に逆転決定すると信じていた鮫島は、ラッキードに決定した、という貝塚からの連絡に声を荒げた。実は貝塚は、三島幹事長から、近畿商事の件を見逃せば防衛次官に昇格させる、と持ちかけられていたのだ。電話を切った鮫島は、机の上に飾ってあったスーパードラゴンF11の模型を叩き割って悔しがった。
あくる日、川又は、貝塚から呼び出される。そこで貝塚は、近畿商事に漏えいした機密書類が川又のものだったこと、芦田が川又の指示で書類を持ち出したと証言したことを受け、その責任を厳しく追及する。怒りをこらえ、貝塚のような人間が官房長のポストにいること自体が自衛隊の悲劇だ、と言い残して立ち去ろうとする川又。貝塚は、そんな川又に、明日付けで防衛部長を解任し、今回の一件を央警務隊長が直々に取り調べることになっている、と告げた。
その夜、川又は、防衛庁に辞表を提出すると、その足で壹岐の家を訪れる。事情を聞いた壹岐は、グラントの価格見積表を入手するよう小出に命じたことを告白し、川又に謝った。その際、川又は、自衛隊の次期戦闘機がラッキードF104に決まったことを壹岐から教えられる。だが、もはや自衛隊に自分の居場所がないことを悟っていた川又は、国民に支持してもらえる自衛隊を作りたかった、とその無念の思いを口にした。
川又と酒を酌み交わした壹岐は、彼を駅のホームまで見送った。電車の中から、壹岐に敬礼をして笑顔を見せた川又。それが、彼の最後の姿だった。川又は、自宅とは逆方向の線路で、轢死体となって発見されたのだ。川又の妻・久代(長野里美)から電話をもらい、事故現場で身元の確認をしたのは壹岐だった。
壹岐は、妻の佳子(和久井映見)とともに川又の葬儀の手伝いにいった。焼香にやってきた貝塚は、川又の死が公務死扱いになるよう取り計らおうと思っている、と壹岐に告げると、こう続けた。「もし遺書のようなものを君が預かっていたり、今後出てくるようなことがあったら、処分してくれるだろうね」。その言葉に怒りを爆発させた壹岐は、貝塚の胸倉につかみかかった。佳子に止められた壹岐は、自責の念、そして貝塚に対する怒りをどうすることもできず...。
壹岐は、久松の元を訪れ、今回の力添えに対して礼を言った。毎朝新聞の記者・田原秀雄(阿部サダヲ)は、川又が本当は自殺したのではないかと疑っていたが、壹岐は何も言おうとはしなかった。夕刊の一面には、自衛隊の次期戦闘機がラッキードF104に決定した、との記事が踊っていた。同じ新聞の片隅には、川又の事故死に関する記事も掲載されていた。
あくる日、大門の元を訪れた壹岐は、退職させてほしい、と願い出るが...。
第5話「戦争と三人の女...」のあらすじ
昭和34年12月、壹岐正(唐沢寿明)は、近畿商事社長の大門一三(原田芳雄)に退職願を提出する。第2次防FXでラッキードF104の受注を獲得するにあたり、部下の小出宏(松重豊)が逮捕されるなど、会社に対して迷惑をかけた責任を取ろうとしたのだ。大門は、そんな壹岐の気持ちに理解を示しながらも、軍人が作戦失敗の責任をとって退職願を書かないのと同じように、企業の戦いにおいても安易に退職願を書くことは許されない、と返す。いまやるべきことは、川又伊佐雄(柳葉敏郎)の霊に花をたむけられるような仕事をすることだ、と大門は言うのだ。
退職を思いとどまった壹岐は、大門から鉄鋼部長のポストを与えられる。日本経済の重工業化が進むなか、繊維業が中心で鉄鋼業界とのつながりが弱い近畿商事を強化することが目的だった。
昭和39年3月、壹岐は、鉄鋼に強い大手問屋を傘下に収めることに成功する。大門は、壹岐の提案を受け、会社全体の経営戦略を指示するための部署を設立し、そのすべてを壹岐に任せることにする。
壹岐は、ロンドン支店にいた兵頭信一良(竹野内豊)やニューヨーク支店の海部要(梶原善)、香港支店の不破秀作(阿南健治)らを呼び寄せて業務本部を設立する。壹岐は、2年間で100名を繊維部門から非繊維部門に異動させるといった大規模な人事を行い、鉄鋼部門などの業績を伸ばしていった。
昭和42年4月、業務本部の成果を高く評価した大門は、壹岐を常務取締役に昇進させる。だが、副社長の里井達也(岸部一徳)や繊維担当専務の一丸(山田明郷)らは、壹岐のやり方に対して反発を強めていた。
そんな折、壹岐たちは、中東情勢が緊迫しているとの情報をつかむ。第三次中東戦争の勃発を懸念した壹岐は、情報収集に全力を注ぐ。一方、東京商事の取締役輸送機本部長に昇進していた鮫島辰三(遠藤憲一)も、中東情勢の変化を察知し、戦争が起きた場合に備えて動き出していた。
ある晩、壹岐は、秋津千里(小雪)と再会する。千里は、比叡山に籠っている兄・清輝(佐々木蔵之介)のことで壹岐に相談したいことがあるのだという。実は、清輝は、結核を患っていた。しかし、千里の説得にも応じず、修行を止めようとはしないらしい。壹岐は、そんな千里に、大阪に出張したときは必ず時間を作るから、一緒に比叡山に行こうと約束した。
食事をともにした壹岐と千里は、クラブ『ル・ボア』を訪れた。するとそこに、インドネシア華僑の貿易商・黄乾臣(石橋蓮司)の第二夫人となり、ジャカルタで暮らしていたはずの紅子(天海祐希)が姿を現す。紅子は、ガールフレンドに会うのは初めてだ、と言って壹岐のことをからかった。千里を気遣い、失礼だ、といってたしなめる壹岐。すると千里は、そんなことはない、ときっぱりと言い切る。
帰ろうとする壹岐を引きとめた紅子は、中東情勢の話を切り出した。黄と結婚してから、いろいろと情報が入ってくるのだという。そこで紅子は、イスラエルの情報は国際ロビイストの竹中莞爾に聞けばわかるかもしれない、と壹岐に告げる。
壹岐は、千里をホテルまで送り届けて帰宅した。すると、壹岐に遅れて、長女の直子(多部未華子)も帰ってきた。直子を送ってきた男性が、鮫島の息子・倫敦(石田卓也)だと知った壹岐は、ふたりの交際に強く反対する。
昼夜を問わず情報収集を続けていた業務本部は、中東戦争の可能性がさらに高まっていることを知る。一方、壹岐は、竹中莞爾から紹介された日東交易という会社の社長・安蒜公一(団時朗)を訪ねる。安蒜は、イスラエル産農作物の輸入を手がけているが、イスラエル側から大量の錫とゴムの発注を受けたのだという。壹岐は、会社に戻り次第手を打つ、と約束し、安蒜からイスラエルの情報を聞きだした。安蒜も、ここ1週間のうちに戦争が勃発し、イスラエルの勝利で短期のうちに終結するとにらんでいた。
会社に戻った壹岐は、情報提供と引き換えに安蒜から頼まれたイスラエル産オレンジの輸入を食品部に依頼する。それを知った里井は、食品部の部員たちに向かって、自分も業務本部の在り方には検討すべき点があると思っているから何か問題があれば報告してほしい、と告げた。
紅子から連絡をもらった兵頭は、日本にやってきた黄に会う。黄は、インドネシア華僑の四大財閥のひとりで、世界中にネットワークを持つ東南アジア貿易のキーパーソンだった。
カイロから戻ってきたという黄は、スエズ運河は必ず封鎖される、と兵頭に告げた。それを見込んで、黄は、近畿商事に1万トン級の戦標船を1隻40万ドル以下で5隻用意してほしい、と依頼する。期限は明後日まで、という厳しい条件だった。壹岐は、ただちに船舶部にかけあうよう、兵頭に指示した。
するとそこに、安蒜からの電話が入る。アカバ湾がアラブ連合に封鎖された、という知らせだった。壹岐は、大門と里井にそれを報告し、第三次中東戦争は短期のうちにイスラエルの勝利に終わる、という業務本部の分析結果を伝えた。しかし里井は、アラブ連合の方が戦力的に優位であること、さらには壹岐が関わった日東交易の件や、戦標船手配の件を持ち出し、勝手に動かれては困る、と壹岐を非難する。大門は、そんな里井をたしなめ、ただちに緊急役員会を招集するよう命じた。
同じころ、黄が近畿商事に戦標船の手配を依頼したことをつかんだ鮫島は、それを奪い取ろうと動き出していた。
第6話「決戦」のあらすじ
壹岐正(唐沢寿明)、兵頭信一良(竹野内豊)ら近畿商事業務本部の面々は、イスラエルとアラブ諸国の関係が緊迫しているとの情報をつかみ、第三次中東戦争の勃発を予測する。もし中東戦争が起き、地中海と紅海を結ぶ重要な航路になっているスエズ運河が封鎖されれば、ヨーロッパ航路はケープタウン回りとなり、運賃の高騰や船の需要が高まることが予想された。この戦争はイスラエルが1週間から10日以内に勝利し、スエズ運河が長期に渡って封鎖されると分析した業務本部は、船舶部にタンカーを確保するよう指示する。
その一方で、壹岐たちは、紅子(天海祐希)の夫で、インドネシア華僑の実力者でもある黄乾臣(石橋蓮司)から、1万トン級の戦標船5隻を至急手配してほしいと依頼されていた。戦標船とは、第二次大戦時に建造された米・英の戦時標準船のことで、その多くは廃船になっているものの、中には貨物船として売買されて運航しているものもあった。壹岐は、近畿商事が東南アジア貿易を展開していく上で、重要な拠点となるインドネシアを押さえるためには黄の力が必要だと船舶部部長の峯(大高洋夫)に訴え、戦標船の手配を急がせようとした。しかし、業務本部のやり方に反発する峯は、中東戦争に関する壹岐たちの分析をも疑問視し、大型タンカーの発注を見直すとともに、戦標船の手配も拒む。
するとそこに、戦標船の件は目途が立ったという黄からの電話が入る。情報を聞きつけた東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)が、黄の出した条件に見合う戦標船を手配していたのだ。それを知った壹岐は、副社長の里井達也(岸部一徳)に直訴し、1隻40万ドルを切る戦標船を手配できれば決裁するという約束を取り付ける。
兵頭が黄の説得に向かっている間、壹岐は、イスラエルに強いパイプを持つ日東交易の社長・安蒜公一(団時朗)を再び訪ね、戦標船の手配を依頼する。それに対して安蒜が出した条件は、日東交易が手がけているイスラエル・オレンジの輸入を、今後3年間、近畿商事が引き受ける、というものだった。
安蒜の力添えで、戦標船を1隻35万ドルで入手できるルートを確保した壹岐たちは、食品部部長の山本(岸博之)にイスラエル・オレンジの件を、峯には黄との取り引きを進めるよう依頼した。
その夜、帰宅した壹岐は、直子(多部未華子)の恋人・倫敦(石田卓也)が来ていることを知る。露骨に不快感を露わにし、帰るよう促す壹岐。それに対して倫敦は、親同士が商売敵だから自分たちまで巻き込まれたようだ、と直子に言うと、平然と佳子(和久井映見)に紅茶を頼んでみせる。
するとそこに、兵頭から電話が入る。峯から、戦標船の件は白紙に戻し、大阪出張中の里井が戻った上で再度検討する、との連絡が入ったというのだ。
あくる日、壹岐は、東京に戻ってきた里井に戦標船の件を確認しにいく。すると里井は、日東交易の顧問でもある国際ロビイストの竹中莞爾(清水紘治)が社長の大門一三(原田芳雄)に接触してきたことを壹岐に告げた。竹中は、壹岐が戦標船の件で安蒜に泣きついたことも承知しており、大門に他のイスラエル産農作物も頼む、などと恩着せがましく言ってきたのだという。それを受けて大門と里井が下した結論は、戦標船の手配と日東交易から依頼されたオレンジの輸入を断る、というものだった。
壹岐は、やり切れぬ憤りを抑えて、兵頭とともに黄のもとを訪れて謝罪する。同席していた紅子は、お互いに今後も付き合いがあるはず、といって黄と近畿商事の間を取り持った。
そんな中、イスラエル軍がカイロをはじめとするアラブ連合軍の空軍基地を攻撃し、ついに第三次中東戦争が勃発する。鮫島の東京商事を始めとする各商社は、戦争が長期化するとの予測のもと、船舶、穀物、ゴム、錫、砂糖などの需要を見込んで、買い注文を出し続けた。一方、近畿商事は、業務本部の作戦通り、相場の流れを静観し、最高値になったところで売りに出る。毎朝新聞の記者・田原秀雄(阿部サダヲ)は、そんな近畿商事の戦略にいち早く気づいていた。
壹岐たちの読み通り、第3次中東戦争は6日間で終結し、イスラエル側の勝利に終わった。近畿商事のひとり勝ちでマスコミに囲まれた大門は上機嫌だった。
ようやく仕事がひと段落ついた壹岐は、シベリア帰還者の支援を続けている谷川正治(橋爪功)のもとを訪れ、ひと時の安らぎを得る。その翌日、壹岐は、京都に向かった。結核を患いながら比叡山で修業を続けている兄・清輝(佐々木蔵之介)に下山の説得をしてほしい、という秋津千里(小雪)との約束を果たすためだった。
千里の案内で清輝の庵を訪れた壹岐は、彼に下山を勧めた。しかし清輝は、戦争中、自分を信じて死んでいった兵たちに代わり、生き残った自分がひとつの完成の道を極めなければならないという思いで天台宗の教えに入った、と下山を拒否する。
「何よりも、荒行のひとつひとつを修めることによって、多少なりとも心の平静が得られるのです。ルソン島で死んでいった部下たちに、一歩、一歩、近づけるような気がして...」。静かにそう話す清輝に、壹岐は何も返すことができなかった。
比叡山を後にして秋津家に立ち寄った壹岐は、千里の叔父・紀次(曽我廼家八十吉)に清輝のことを報告した。するとそこに、丹阿弥流の能楽師・丹阿弥泰夫(加藤虎ノ介)がやってくる。千里と泰夫は7年ほど前に見合いをしたが、当時はお互いに打ち込むものがあるという理由で結婚には至らなかったのだという。紀次は、千里に泰夫との結婚を勧めていた。
壹岐は、千里とともに、以前も案内された、町を一望できる場所を訪れた。この場所から見る夕日は美しい、と壹岐に話す千里。そこで千里は、「結婚を考えてみようかしら」とふいに言い出した。
あくる日、出社した壹岐は、大門を訪ねた。そこで壹岐は、戦標船の件を持ち出し、会社の体質に問題があるのか、自分の出世が感情的な対立を生んだのかわからないが、常務でない方が仕事ができると言い出す。戦略を立てても人事のこだわりでそれが迅速に実行できないのならば、情勢分析に当たるのは役職抜きか、副社長の権限を超えるものを持たなければならない、というのだ。それは、壹岐が事実上、近畿商事のナンバー2になることを意味していた。
第7話「妻との誓い」のあらすじ
第三次中東戦争の勃発に端を発した商社間の争いは、壹岐正(唐沢寿明)率いる近畿商事業務本部の迅速な情報収集と的確な分析により、同社のひとり勝ちで終わった。だがその結果、近畿商事内では、壹岐の活躍に危機感を募らせた副社長・里井達也(岸部一徳)の一派と業務本部との間の対立を生みだしてしまう。
同じころ、秋津千里(小雪)は、能楽師の丹阿弥泰夫(加藤虎ノ介)と会っていた。そこで泰夫は、丹阿弥流宗家である両親をはじめとする、三親等の係累まで書き記した紙を千里に手渡し、色々な親類がいるが自分は次男坊で煩わしい付き合いは一切しない主義だ、と伝えて彼女にプロポーズする。
昭和42年7月、近畿商事では、年に2度開催される経営全体会議が行われる。その席で壹岐たち業務本部は、重工業化に対応するために繊維部門のさらなる縮小を唱えた。だが、里井を中心とした反業務本部勢力は、繊維部門が社内一の売り上げを上げていることを理由にこの再縮小案に猛反発したため、会議は紛糾する。常務のひとりは、壹岐に対して、近畿商事に来てまで大本営の作戦参謀気どりはやめろ、とまで言い放った。
その夜、社長の大門一三(原田芳雄)は、里井とともに料亭を訪れる。そこで里井は、改めて壹岐の提案に反対した。すると大門は、何故もっと大きな立場に立って壹岐を使おうとしないのか、と里井に問いかける。それが近畿商事のナンバー2である里井の立場ではないか、というのだ。その言葉に喜んだ里井は、大門の方針に従うことを誓って頭を下げた。
そのころ、アメリカを始めとする各国政府は、国内産業保護の観点から外国資本の参入を事実上禁止してきた日本政府への批判を高め、中でも特に、自動車産業に対する資本の自由化を求めていた。資本の自由化が実現すれば、持ちこたえられるのはアイチ自動車と日新自動車だけで、近畿商事が輸出代理店となっている業界4位の千代田自動車などはアメリカのビッグ3、フォーク、ユナイテッドモーターズ、グレンスラーらに飲み込まれてしまう可能性が高かった。壹岐は、ビッグ3の上陸こそ、国際企業とのビジネスをつかむチャンスだと考え、兵頭信一良(竹野内豊)や海部要(梶原善)ら業務本部のスタッフに、アメリカ自動車業界に関する情報の収集を命じた。
一方、里井は、大学時代の同窓でもある千代田自動車の営業担当専務・村山(田村亮)に会う。そこで村山は、社運をかけた新車の開発を進めていること、万が一それが失敗に終わったときは、業界5位の富国自動車との合併を考えていることを里井に打ち明ける。
そんな折、壹岐のもとに、航空機部時代の元部下で、第2次防FXをめぐる情報漏えい事件で会社を追われた小出宏(松重豊)から電話が入る。レストランで壹岐と会った小出は、ひとしきり会社を追われた恨み事をいうと、あるものを取り出した。それは、千代田自動車が社運をかけて開発した「115」と呼ばれている新車の設計図とテスト走行の写真だった。小出は、壹岐の口利きで、それを千代田自動車に200万円で買い取ってもらいたいのだという。
小出から「115」の設計図と写真を預かった壹岐は、鉄鋼部時代に知り合った千代田自動車の技術担当常務・小牧徹也(小野武彦)に連絡を取り、それを見せた。それが間違いなく「115」のデータであることを確認した小牧は、これから先の交渉は自分たちが行いたいと壹岐に告げた。
壹岐家では、佳子(和久井映見)と直子(多部未華子)が、帰省してくる長男・誠(斎藤工)の話で盛り上がっていた。するとそこに小出から電話が入る。例の件の返事を待っている、という内容だった。不安を感じた佳子は、帰宅した壹岐にそのことを伝えると、小出に関わっていて大丈夫なのか、と問いかけた。しかし壹岐は、余計な心配をしなくていい、と不機嫌そうに答えただけだった。
あくる日、壹岐は小牧と会った。小牧は、すでに小出に金を渡していた。小牧は、その件で迷惑をかけてしまったことを壹岐にわびると、相談事を持ちかけた。千代田自動車では、小牧たち技術部門が自主独立路線を主張しているのに対し、村山ら営業部門は他社との合併をもくろみ、対立しているのだという。「115」にそのすべてを賭けている小牧は、最新設備が整った千代田自動車の厚木工場に壹岐を招き、技術力を見てほしいと申し出た。壹岐は、それを承諾した。その際、小牧は、村山が里井と組んで、富国自動車との合併を画策していることも打ち明けた。
夜、クラブ『ル・ボア』を訪れた壹岐は、そこで里井と村山に出会う。壹岐と名刺を交換した村山は、厚木工場があれば合併話も有利に進められるから一度壹岐にも見てもらいたい、などと話す。
別の日、壹岐は、兵頭にだけ事情を打ち明け、千代田自動車の厚木工場に出向く。そこで「115」の試作車を目にした壹岐は、その美しい車体に魅せられていた。
業務本部に戻った壹岐は、兵頭や不破秀作(阿南健治)らから、千代田自動車に関する報告を聞く。それによれば、千代田自動車は販売ルートの強化さえできれば、自主独立の可能性が高いと思われた。壹岐は、部下たちに千代田自動車の自主独立路線を全面的にバックアップする、と告げると同時に、すでに里井が富国自動車との合併に動いていることを打ち明け、慎重に事を進める必要がある、と念を押した。
そのとき、外務省を訪れていた海部から思わぬ知らせが入った。米自動車産業のビッグ3であるフォーク社の会長・フォーク2世(アレキサンダー・バリ)が緊急来日する、というのだ。壹岐は、ただちにその来日目的を探るよう海部に指示を出した。
羽田空港内で行われた記者会見で、フォーク会長は、広島にある東和自動車のロータリーエンジンを見学に行く、と今回の来日目的を説明した。毎朝新聞の田原秀雄(阿部サダヲ)は、東和自動車との提携の話し合いではないか、とぶつけたが、フォークはそれを否定した。そこで会見を打ち切ったフォーク会長が会場を出ようとしたそのとき、ドアの先にいたのは、東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)だった。
それを知った大門は、壹岐に怒りをぶつけた。壹岐は、広島でのフォーク会長の動きを追っていた海部から報告を受けるが、鮫島の狙いはいまだ不明だった。
そこに黄紅子(天海祐希)から電話が入った。『ル・ボア』に千代田自動車の村山が来ているからすぐに来たほうがいい、という知らせだった。
壹岐が『ル・ボア』を訪れると、そこに何故か千里と泰夫の姿があった。実は泰夫は村山の甥にあたり、今日は千里との婚約を報告しにきたのだという。その際、千里は、今晩、東京のホテルに宿泊することを壹岐に告げた。
同じころ、壹岐家では、佳子たちが壹岐の帰りを待っていた。直子と誠は、いつものことだ、と壹岐を待つことを諦め、先に食事を始める。
千里たちが店を出た後、壹岐は、ひとりで飲んでいた。そこに近づいてきた紅子は、千里がホテルの名前を言ったのは、自分の気持ちに区切りをつけたいからだ、と壹岐に告げ、ホテルの電話番号を書いた店の名刺を壹岐の上着のポケットに入れた。「何を怖がっているの? 千里さんにのめりこみそうだから? それとも、奥さんに叱られるから?」。壹岐は、そんな紅子の言葉を否定すると、自分たち夫婦のことは君のような女性にはわからない、と言って店を出て行く。
壹岐が自宅に戻ると、玄関の前に小出がおり、中の様子をうかがっていた。小出は、壹岐に礼を言いに来た、といって笑い、これからもよろしく頼むなどと言い残して去っていく。
佳子は、帰宅した壹岐に、小出と何かあったのか、と尋ねた。誠が帰ってくることを壹岐が忘れていたと知った佳子は、いままでずっと我慢していた不満を口にした。一緒にいても家族を思う気持ちがないなら壹岐がシベリアに抑留されて離れ離れになっていたときより酷い、というのだ。佳子は、自分にとっては家族がすべてであり、一緒にいられることが何よりも大切だ、といって涙を流した。その言葉を聞いた壹岐は、佳子に謝り、そっと抱きしめた。
鮫島を直撃した田原は、東京商事が仲介役になって、東和自動車とフォーク社の提携を進めようとしていることを確信する。
大門は、タキシードに着替え、フォーク会長の歓迎レセプションに出席する準備をしていた。だが、その席に出席できないとの報告を受けた大門は、秘書を怒鳴りつけ、怒りをあらわにした。
そのころ、壹岐や里井たちは、「舞い降りたフォーク」という田原が書いた夕刊記事を手にして...。
第8話「愛妻の死!」のあらすじ
資本自由化の波を受け、国内では自動車産業の再編成が行われようとしていた。そんな折、米自動車産業ビッグ3の一角、フォーク社のフォーク二世会長(アレキサンダー・バリ)が突然来日する。その歓迎レセプションを仕切っていたのは東京商事だった。壹岐正(唐沢寿明)は、部下の兵頭信一良(竹野内豊)や海部要(梶原善)らにフォーク会長の来日目的を探らせようとした。だが、東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)に阻まれ、情報を得ることができなかった。
壹岐は、フォーク会長の来日目的を探るために、通産大臣に就任した久松清蔵(伊東四朗)を訪ねる。久松は、フォークの来日目的は資本の自由化要求であり、政府としては外資との合弁会社のみ認める方針だと壹岐に告げた。壹岐は、中小の国内自動車メーカーを外資から守るためには合併による企業体質の強化しかない、と考えている久松に、千代田自動車と富国自動車の合併話を切り出した。久松によれば、通産省ではすでに両社を合併させる青写真ができあがっているという。そこで壹岐は、久松の力添えで、両社の合併話を引きのばしてほしい、と頼み込む。
壹岐が帰宅すると、谷川正治(橋爪功)が訪ねて来ていた。谷川は、シベリア長期抑留者の会が機関紙を発行して10年になったのを記念して、湯呑を作ったのだという。壹岐は、その出来栄えに感心しながらも、まだ自分はこの湯呑を使う心境には至っていない、と答えた。谷川は、そんな壹岐の思いを受け止め、11年間家を守ってくれた佳子(和久井映見)にも感謝しなければならないな、と声をかけた。その言葉に、佳子は、最後の帰還船でも帰ってこられなかった抑留者の家族のことを思うと、いまの自分は幸せだと答えた。
その晩、壹岐は、佳子に、来月アメリカに出張することと、大門が筆頭理事を務めている日豪経済委員会のパーティーに一緒に出席するよう伝える。壹岐は、戸惑っている佳子をいたわるように、これからはそういう機会も増えるだろうからいい着物を作ればいい、と言葉をかけた。
別の日、壹岐は、千代田自動車の技術担当常務・小牧(小野武彦)から相談を持ちかけられる。自主独立を主張する小牧ら技術部門は、里井と組んで合併を進める営業部門と対立していた。小牧は、ジャカルタで進めていたトラックの組み立て工場建設計画が合併推進派によって止められてしまったことを壹岐に打ち明け、力を貸してほしいと頼む。そこで壹岐は、ジャカルタ出張の予定があった兵頭に、極秘でトラック工場建設のための情報収集を命じる。
同じころ、毎朝新聞の記者・田原秀雄(阿部サダヲ)は、鮫島から情報を得るために、千代田自動車の経営立て直しをめぐって壹岐と里井が対立しているという情報を流した。
ほどなく、インドネシアの兵頭から連絡が入る。兵頭は、紅子(天海祐希)に連絡をとって彼女の夫・黄乾臣(石橋蓮司)に会い、そのつてでインドネシア陸軍にトラックを売り込める可能性があることを壹岐に報告した。
佳子の着付けを手伝っていた直子(多部未華子)は、ふいに、壹岐がシベリアに抑留されていたころの話を始める。やっと佳子の苦労が報われて、嬉しいのだという。佳子は、そんな直子に、自分の幸せを真剣に考えてほしいと話す。帰宅した誠(斎藤工)は、せっかくだから写真を撮ってあげる、といって、佳子の姿をカメラに収めた。
壹岐夫妻は、日豪経済委員会オーストラリア・ミッションの歓迎パーティーに出席した。大門は、佳子を笑顔で迎えると、その内助の功をほめたたえる。が、大門の妻・藤子(赤座美代子)や里井の妻・勝枝(江波杏子)は、佳子に冷ややかな視線を向けていた。
パーティーの最中、庭園にいた壹岐のもとにやってきた鮫島は、いきなり千代田自動車の話を切り出した。それを聞きつけ、ふたりに近づく里井。そこで鮫島は、壹岐が千代田自動車の件で久松に会ったことや、兵頭にジャカルタでの調査を命じたことなどを話し始める。その話を聞いた里井は、「私に隠れてそんなやり方をしていたのか、君は!」と壹岐を怒鳴りつけた。
大門は、大事な席で内輪もめし、醜態をさらした壹岐と里井を非難した。しかし里井の怒りは収まらない。千代田自動車と富国自動車の合併は、里井が担当している機械部門の決定事項だというのだ。それに対して壹岐は、千代田自動車に関して会社の方針はまだ決定されておらず、経営会議で討議すべきだと主張した。そのやり取りを黙って聞いていた大門は、千代田自動車の件は経営会議で議論してから決めればいい、と告げる。
帰宅した佳子は、谷川からの手紙で、元陸軍将校の竹村勝(中丸新将)が高血圧で入院したことを知る。佳子が病院に連絡を入れると、電話に出たのは秋津千里(小雪)だった。
あくる日、壹岐と佳子は、病院で待ち合わせをして竹村を見舞った。約束の時間より1時間も前に壹岐がやってきたことに驚く佳子。その際、佳子は、千里が婚約したことを竹村から教えられる。
病室を出た後、佳子は、家に電話をしにいく、といってその場を離れた。その間、壹岐と千里は、ロビーのソファーに座って話をしていた。壹岐は、アメリカ出張の際、仕事の参考になるものを買ってきましょうか、と千里に話した。「では、ひとつだけ。メトロポリタン美術館の絵葉書がほしいです。それでお便りを...」と返す千里。電話をかけられずに戻ってきた佳子は、そんなふたりの姿を見つめていた。
帰り道、壹岐は、黙りこんでいる佳子のことを気にして、何か冷たいものでも飲んでいくか、と声をかけた。そんな壹岐に、千里がいることがわかっていたのか、と問いかける佳子。壹岐は、病院に早く着いたのも千里に会ったのも偶然だ、と返す。
壹岐と佳子は、気まずいまま別れた。それでも佳子のことが気になった壹岐は、横断歩道を渡ろうとしていた彼女を呼び止めた。が、佳子が足を止めて振り返った次の瞬間、横断歩道に侵入してきた車が、彼女をはねてしまう。
佳子は、救急車で病院に収容された。が、すでに手遅れの状態だった。知らせを受け、直子と誠が病院に駆け付けた。誠は、壹岐につかみかかり、どうしてこんなことになったのか、と責めた。
事故から1週間後。誠は、下宿生活を送っている仙台に戻る。家を出る前、佳子の遺影を見つめていた誠は、「お母さん、幸せだったのかな?」とポツリとつぶやいた。
工房で作業していた千里は、アメリカ公演から戻った婚約者・丹阿弥泰夫(加藤虎ノ介)に会う。そこで泰夫は、佳子が亡くなったことを千里に告げた。
壹岐は、佳子を失った悲しみから逃れるように、早々に仕事に復帰する。大門は、そんな壹岐に、ニューヨークに赴任し、アメリカ近畿商事の社長をやってみてはどうか、と持ちかけるが...。
第9話「哀しい女」のあらすじ
壹岐正(唐沢寿明)は、妻の佳子(和久井映見)を事故で失った悲しみから逃れるかのように、ひたすら仕事に没頭した。近畿商事社長の大門一三(原田芳雄)は、そんな壹岐の心情を察し、アメリカ近畿商事の社長としてニューヨークに駐在してはどうか、と持ちかける。
一方、近畿商事が輸出代理店を務めていた千代田自動車は、社運をかけて開発した新車115タイガーを販売したものの、アイチ自動車のカロナや日新自動車のレッドバードといったライバル車に惨敗してしまう。しかも、近畿商事副社長の里井達也(岸部一徳)が中心となって合併話を進めていた富国自動車側からは、合併は白紙に戻したいとの申し出もあったのだ。里井は、自主独立路線も合併の道も断たれた千代田自動車との取引にはもはや何のメリットもないとして、手を引くべきだと大門に進言した。
千代田自動車の技術担当常務・小牧徹也(小野武彦)は、千代田自動車はもう終わりだ、と壹岐に告げる。他社がより低価格の対抗車をぶつけてきたのは、小出宏(松重豊)がタイガーの情報を漏らしたせいだ――小牧はそういって涙を流した。
ニューヨーク行きを決心した壹岐は、交換条件としてひとつだけやりたい仕事がある、と大門に願い出る。それは、千代田自動車と米自動車産業ビッグ3の一角、フォーク社との提携を実現させたい、というものだった。大門は、それを了承すると、自ら千代田自動車サイドやメインバンクとの交渉役を買って出て、この件は社内でも極秘扱いにするよう壹岐に命じた。
その夜、壹岐は、娘の直子(多部未華子)にニューヨーク赴任の話を伝える。すると直子も話したいことがあるという。そこで直子は、鮫島辰三(遠藤憲一)の息子・倫敦(石田卓也)と結婚したい、と切り出す。直子と倫敦は、鮫島からも結婚を反対されていた。だが、直子の決心が固いことを知った壹岐は、倫敦との結婚を許す。
壹岐は、業務本部の部下だった兵頭信一良(竹野内豊)、海部要(梶原善)、不破秀作(阿南健治)だけに千代田自動車とフォーク社の提携話を打ち明ける。ほどなく、兵頭は業務本部を離れて石油部長になり、海部はアメリカ近畿商事の副社長として壹岐に同行することになった。壹岐の後任として業務本部長に就任したのは、里井の息がかかった角田保(篠井英介)だった。
渡米した壹岐は、海部やロス支店から呼び寄せた塙四郎(袴田吉彦)らとともに、フォーク社との交渉に向けて動き始める。だが、交渉は困難を極めた。1年もの間、フォーク社にアプローチを続けたにもかかわらず、面会すらできなかったのだ。
昭和45年2月。仕事を終えてアパートに戻った壹岐は、直子から届いた手紙を開ける。そこには、直子と倫敦、そしてふたりの間に生まれた生後10ヵ月の長男・太の写真が入っていた。
ある日、壹岐は、フォーク会長(アレキサンダー・バリ)と韓国・光星物産会長の李錫源(榎木孝明)が会談を行ったというニュースを見る。フォーク社と光星物産は、すでに3年前に提携を実現させていた。実は壹岐と李は、陸軍士官学校の同期だった。壹岐は、李に連絡をとり、密かに相談を持ちかける。
そんな折、アメリカ近畿商事のオフィスに兵頭がやってくる。そこで兵頭は、そろそろ東京に戻ってほしい、と壹岐に頼んだ。兵頭は、国内資本による石油開発を手がけたいと思っているのだという。そこに、塙と八束功(山崎樹範)が興奮しながら飛び込んできた。フォーク社とコンタクトがとれ、フォーク会長のブレーンであるアジア渉外担当のプラット(ニコラス・ペタス)が壹岐に会う意思を表明したのだという。それが壹岐の力によるものだと推察した兵頭は、東京で待っている、と言って別れた。壹岐たちは、さっそくフォーク社との会談に向けて、準備を始めた。
同じころ、秋津千里(小雪)は、壹岐の家に、銀座で開く個展の案内を送ろうとして迷っていた。千里は、能楽師の丹阿弥泰夫(加藤虎ノ介)との婚約を解消していたが、まだそれを壹岐に言えずにいた。
壹岐は、フォーク社との会談に向けて、塙、八束とともにデトロイトに向かった。そこで壹岐たちが見たのは、東京商事の鮫島の姿だった。壹岐は、塙に鮫島の動向を探るよう命じた。
フォーク社を訪れた壹岐たちは、プラットとの会談に臨んだ。プラットは、赤字経営の千代田自動車と提携することに難色を示した。それに対して壹岐は、フォーク社が日本に進出するためには千代田と提携するしかないことを説明する。プラットは、冷静かつストレートな壹岐の言葉に押されながらも、仮に千代田自動車と提携することになった場合、50%の出資比率と役員の派遣が条件だと告げる。すると壹岐は、出資比率等は即答できないが、まずは千代田自動車と同じテーブルにつくことに合意してほしい、と迫った。
報告を受けたフォーク会長は、プラットをたった一度で説き伏せ、李からも信頼されている壹岐の手腕を認め、すべてを近畿商事に任せる、といって委任状にサインした。
壹岐からの報告を受けた大門は大喜びだった。兵頭や不破も、壹岐たちが1回目の交渉でフォークの委任状をとりつけたことに驚きを隠せなかった。が、ガッツポーズをして喜んでいた兵頭たちの前には、里井の姿があり...。
壹岐は、里井に気づかれたことを兵頭から教えられる。そのとき、玄関ブザーが鳴った。ユニオン船舶のパーティーに出ていた黄紅子(天海祐希)が訪ねてきたのだ。パーティーで一緒になった海部から壹岐のアパートの住所を聞いたのだという。
酔ったようすの紅子は、夫の黄乾臣(石橋蓮司)のことを話しているうちに、壹岐に絡み始める。壹岐のことを見ていると時々無性に腹が立つ、というのだ。壹岐は、そんな紅子を送っていこうとした。すると紅子は、いきなり抱きつき、壹岐のことが好きだと言い出す。とっさに紅子を振りほどく壹岐。紅子は、壹岐をののしると、千里のことが好きなら男らしく結婚してあげるべきだ、と言い放った。そこで紅子は、千里が婚約を解消したことを壹岐に告げ...。
第10話「恋と野望」のあらすじ
アメリカ近畿商事の社長に就任した壹岐正(唐沢寿明)は、経営が悪化していた千代田自動車と、米自動車産業ビッグ3の一角、フォーク社との提携を画策した。交渉は困難を極めたが、陸軍士官学校の同期でもある韓国の光星物産会長・李錫源(榎木孝明)の助力を得た壹岐は、フォーク会長(アレキサンダー・バリ)との会談に成功し、千代田自動車との提携に関する委任状を取り付ける。
社長の大門一三(原田芳雄)に委任状を届けるため、帰国することになった壹岐は、途中、韓国に立ち寄り、李のもとを訪れた。李の仲介により、崔大統領(鶴田忍)に会う機会を得た壹岐は、ソウルで地下鉄の敷設計画があり、日本の援助を必要としていることを知る。
帰国した壹岐は、副社長の里井達也(岸辺一徳)を訪ね、千代田自動車とフォーク社の提携に際し、連絡に行き違いがあったことを謝罪すると、崔大統領から得た韓国の地下鉄計画の情報を伝える。それは、里井抜きで提携話を進めたことに対する、壹岐からの手土産だった。里井は、その話に飛びつき、自ら大門に伝えて対策を立てる、と答える。その際、里井は、副社長のひとり、一丸松次郎(山田明郷)が次期社長の座を狙って積極的に派閥作りを進めている、と切り出し、壹岐に意見を求めた。それに対して壹岐は、次期社長は、大門を長年支えてきた里井をおいて他には考えられない、と答える。
東京本社に顔を出した壹岐は、一丸に呼び止められる。一丸は、計画が差し戻された韓国の合繊プラントが、壹岐の交渉のおかげで再検討されることになり、喜んでいた。別れ際、一丸は、里井のことを持ち出し、壹岐が東京に戻ったら関連会社に出すつもりでいるから気をつけたほうがいい、と忠告する。
その夜、壹岐は、銀座で開かれていた秋津千里(小雪)の個展に顔を出す。壹岐が帰国した日に、ちょうど千里から案内状が届いたのだ。2年ぶりの再会を果たしたふたりは、互いに目に見えない結びつきのようなものを感じていた。そこで壹岐は、千里にとって一番思い入れが強い作品だという青磁の壺を譲ってもらう約束をする。
あくる日、壹岐は、大門、里井とともに、千代田自動車とそのメインバンクである第三銀行との三者会談に臨む。毎朝新聞の田原秀雄(阿部サダヲ)は、壹岐の帰国などから、千代田自動車に関する動きを感じとっていた。田原のマークをかわして会談に臨んだ壹岐は、提携に関するフォーク社側の意向を伝える。千代田自動車の社長・森(大林丈史)は、50%の出資比率と代表権を持つ役員の派遣、というフォーク側が出した条件に当然のごとく反発した。大門や壹岐は、フォーク社にも千代田自動車側の意向を伝え、同じテーブルについて話し合うことを了承させている、と言って森を説得した。
夜、壹岐は、谷川正治(橋爪功)の家を訪ねた。谷川は、アメリカで独身生活を送る壹岐のことを案じ、再婚をしてはどうかと勧めた。壹岐は、谷川の気づかいに感謝しながらも、自分にとって妻は佳子ただひとりだと思っている、と答えた。
ニューヨークに戻ることになった壹岐は、壺が届いたことに対する礼もあって千里に電話をした。千里は、そんな壹岐に、個展も終わって仕事が落ち着いたのでニューヨークに行ってもいいかと尋ねる。壹岐は、歓待する、と約束して電話を切った。
壹岐は、千里から譲り受けた壺をニューヨークまで持っていくつもりでいた。壹岐の荷物を準備していた娘の直子(多部未華子)は、千里が独身であることに興味を示し、本当はパトロン的な人がいるのではないか、と言い出す。その言葉に反応し、むきになって怒る壹岐。直子は、そんな父の姿に何かを感じたようすだった。
壹岐は、ニューヨークに旅立つ前に東京本社を訪れた。そこで里井は、通産省サイドが、千代田自動車とフォーク社の提携に肯定的であること、そして外資の出資に関しては3分の1の33.3%をひとつのめどとして考えていることを壹岐に伝える。あわせて里井は、自らデトロイトに出向いてフォーク社との交渉をまとめるつもりでおり、業務本部から本部長の角田保(篠井英介)を加えることにした、と壹岐に告げる。
数週間後、ニューヨークに千里がやってきた。食事をともにし、ダンスを踊る壹岐と千里。ふたりは、離れがたい思いを抑え、再会を約束して別れた。
別の日、壹岐は、フォーク社との交渉に先がけてデトロイトを訪れ、フォーク側から出資比率を33.4%まで下げてもいいという了承を得る。
同じころ、里井は、角田とともに、壹岐たちの提携案とは別のプラントをまとめていた。が、里井は、ふいに激しい胸の痛みに襲われてしまう。
約束通り千里と再会した壹岐は、ニューヨークのレストランで食事をともにする。千里は、美術館だけでなく、アーリントン墓地などを見学してきたのだという。その席で千里は、東京裁判の前夜に自決した父親の話を持ち出した。「父はあのとき、やはり自決しなければならなかったのでしょうか?」と問われた壹岐は、言うべき言葉を持っていない、と答えて、こう続けた。自分自身も、第二の人生を誤ってはならぬという思いで商社に入りながら振り返れば後悔することの方が多い、と。
店を出た壹岐は、もう少し話がしたい、という千里の願いを聞き入れ、彼女をアパートに案内する。そこでふたりは、遂に結ばれる。
あくる日、壹岐の部屋にやってきたメイドのハル江(吉行和子)は、ベッドに長い黒髪が落ちていることに気づいていた。
そんな中、里井と角田がニューヨークにやってくる。そこで里井は、自分たちが作成したフォーク社との交渉資料を壹岐たちに提示し...。
第11話「嫉妬に殺される男」のあらすじ
壹岐正(唐沢寿明)は、副社長の里井達也(岸辺一徳)とともに、千代田自動車との提携を目指して米自動車産業ビッグ3の一角、フォーク社との交渉に臨んだ。千代田自動車側は、フォーク社の出資比率を25%以下にしたいと主張していた。それに対してフォーク社側は、重要決議に拒否権を行使できる33.4%以上でなければ交渉には応じない、としていた。
そこで里井は、腹心である業務本部長の角田保(篠井英介)とともに新たなプランを作成する。それは、壹岐たちが進めてきた提携話を白紙に戻し、フォーク社と千代田自動車が対等の出資比率で新たな合弁会社を作るというプランだった。
壹岐らとともにデトロイトのフォーク社を訪れた里井は、フォーク会長(アレキサンダー・バリ)との会談を行った。その席でフォーク会長は、新たな合弁会社を作るという里井の提案に強い興味を示し、千代田自動車の経営状況を調べた上で検討する、と答える。
里井は、さっそく社長の大門一三(原田芳雄)に連絡をとり、来月フォーク社が日本に覆面調査団を派遣するところまでこぎつけたことを報告する。里井は、調査団の受け入れ準備も自ら主導するつもりでいた。そんな里井に、壹岐は、千代田自動車がフォーク社と合弁会社を作るプランに納得するとは思えない、と進言する。仮に50対50の対等出資で合弁会社をスタートさせても、あっという間にフォーク社に飲み込まれてしまう危険性があるからだった。一方、フォーク社にしても、千代田自動車の経営状況が予想以上に悪化していることを知ったらこの話から手を引く可能性が高かった。
しかし里井は、壹岐の言葉をさえぎり、自分の案が通らなかったからといって水を差すのは止めろと言い放つ。そのとき、突然、里井が苦しそうに胸を押さえて倒れこんだ。壹岐や角田は、救急車を呼んで里井を病院に運んだ。狭心症の発作だった。
里井は、心臓病では世界有数の病院に運ばれたこともあって、幸い大事には至らなかった。が、検査を担当した医師は、心筋梗塞に移行する恐れもあることから、今後は海外出張などを控え、副社長のポストからも退くようアドバイスする。しかし里井は、フォーク社側調査団の来日が控えているのにのんびりしているわけにはいかない、といって強引に退院しようとした。そこで壹岐は、来日を延期するようフォーク社側と交渉する、と里井に告げる。
壹岐たちは、里井がカゼをひいて熱を出したことにして、発作で倒れたことを伏せる。が、毎朝新聞の記者・田原秀雄(阿部サダヲ)は、渡米したはずの里井が帰国していないことに何かを感じたようすだった。
そんな中、壹岐は、部下の塙四郎(袴田吉彦)に、ロサンゼルスに滞在している秋津千里(小雪)の相手を頼む。塙は、千里をサンタモニカの海に案内し、食事に連れていった。その席で塙は、壹岐の妻だった佳子(和久井映見)の思い出話をする。海部要(梶原善)が壹岐に再婚を勧めているが亡くなった佳子に代わり得る人はいない、と塙は千里に言った。
里井は、角田から、田原が千代田自動車の件で大門に接触してきたこと、そして副社長の一丸松次郎(山田明郷)が里井の病気に関して本当にカゼなのかと言い出していることを教えられる。それを聞いた里井は、明日日本に帰国する、と言い出す。里井の体を心配した壹岐は、それを止めようとした。しかし里井は、心配するふりをしながら本当は心臓病患者というレッテルを貼りたいだけではないのか、と壹岐にかみつき、聞き入れようとはしなかった。
あくる日、壹岐たちは、空港まで里井の見送りに行く。里井は、フォーク調査団を迎えるために近々日本に行く予定になっていた八束功(山崎樹範)を同行させる、という壹岐の申し出を断り、ひとりで帰国した。
壹岐が会社に戻ると、ロスから帰ってきた塙がやってきた。塙は、壹岐にとって千里が特別な存在ではないかと気づき、佳子の話をしてしまったことを気にしていた。塙から、千里との結婚を考えているのかと問われた壹岐は、一瞬戸惑いながらも、どんな形にせよ彼女の将来を見守ってやらなければならないと思っている、と答えた。
その夜、壹岐は千里に電話をする。千里は、ホテルの部屋で帰国の準備をしていた。千里は、壹岐と結ばれたものの、不安を抱えて苦しんでいた。壹岐は、そんな千里に、気持ちはわかっているつもりだし、すべてはこれからじゃないか、と言葉をかける。
別の日、無事帰国した里井は、大門のもとを訪れる。大門は、里井の体調を気遣い、無理をしないよう助言した。里井ひとりに頼っていたことへの反省も踏まえ、フォーク社との今後の交渉に関しては、壹岐をもっと使う体制にするつもりだという大門。すると里井は、いきなり激高し、出世のために自分を重病人に仕立て上げる壹岐は恐ろしい男だ、などとまくしたて、大門を驚かせる。
1週間後、フォーク社を訪れた壹岐は、アジア渉外担当のプラット(ニコラス・ペタス)から、日本を訪れる5人の調査団メンバーを紹介される。重要なのは、千代田自動車と外資が提携するのではないかということで目を光らせているマスコミ対策だった。
先乗りして東京で調査団を出迎えた八束や不破秀作(阿南健治)は、慎重に彼らをホテルまで送り届けた。だが、八束たちからの報告で、日本にやってきたのは5人ではなく4人だと知った壹岐は、強い不安を抱き...。
第12話「裏切りの極秘調査」のあらすじ
千代田自動車との間で新たな合弁会社を作るという近畿商事の提案に興味を示したフォーク社は、日本に覆面調査団を派遣する。千代田自動車の経営状態を調査するためだった。
壹岐正(唐沢寿明)は、調査団の責任者で、海外企画担当マネージャーのアーリックマン(ブレット・コールマン)が来日していないことに気づき、その行方を追っていた。ほどなく、調査団を出迎えるために帰国していた八束功(山崎樹範)から連絡があり、アーリックマンは、ホノルルでメルボルン行きの飛行に乗り換え、オーストラリアに向かったとの情報が入る。フォーク社側の説明によれば、オーストラリア・フォークで緊急事態が発生したためだという。不安を拭い去れなかった壹岐は、塙四郎(袴田吉彦)に、近畿商事の支店網を使ってアーリックマンが本当にオーストラリアにいるかどうか調べるよう指示する。
一方、副社長の里井達也(岸部一徳)と業務本部長の角田保(篠井英介)は、フォーク調査団を案内する販売店のリストを八束に渡す。それは、千代田自動車の販売店の中でも、比較的経営が安定している店を選んだものだった。フォーク社が事前調査に基づいて販売店を指定してくることを危惧した八束は、調査団メンバーの経歴だけでも調べておくべきではないか、と里井たちに進言した。しかし里井は、壹岐に何を言われたかは知らないが口を挟むな、と八束に言い放つ。
あくる日、里井たちは、調査団メンバーとの会合に臨む。その席で、調査団のラディ(エリック・ボーシック)は、里井たちが提示した販売店リストを拒否し、自分たちが用意してきたリストを提示する。すでに彼らは、独自の情報を元に、経営が悪化している販売店をリストアップしていた。
同じころ、壹岐は、海部要(梶原善)からの報告で、フォーク調査団が里井たちの販売店リストを拒否したことを知る。そこに飛び込んできた塙は、アーリックマンがオーストラリアに立ち寄った形跡がないことを壹岐たちに伝える。
八束は、調査団のラディを連れて販売店を訪れた。だが、見学を終えたラディは、突然、販売店以外の場所に行きたいと言いだし、八束に、中古車販売店や実際に千代田自動車の車を使っているタクシー会社を案内させる。千代田自動車の車は、どこに行っても不評だった。八束は、それを隠すために必死で嘘の内容をラディに通訳していた。だが、実はラディは、神戸生まれの神戸育ちで、八束がウソを言っていることなど最初からわかっていた。
秋津千里(小雪)は、壹岐の自宅に電話をする。壹岐と話がしたかったのだ。しかし壹岐はまだ帰宅しておらず、電話に出たのはメイドのハル江(吉行和子)だった。壹岐が仕事で忙しくしていることを知った千里は、名前も名乗らずに電話を切った。
同じ日、千里は、比叡山を訪れ、久しぶりに兄の清輝(佐々木蔵之介)に会った。千里は何も言わなかったが、そのようすから何か相談事があるではないかと察した清輝は、筆をとって「共生」<ともいき>という言葉を書いた。仏教の根本は、自分のためだけの生き方ではなく、自分の生き方が他者に感銘を与え、幸せをもたらすことができるという、自他共に生きる共生の心にある、という清輝。「自分の執着、執念だけで動けば、自分を縛すると同時に相手をも縛することになり、共生の世界を失い、修羅の世界に没することになる」。清輝の言葉が千里の心に響いた。
そんな折、里井は、自宅で再び発作を起こす。妻の勝枝(江波杏子)に付き添われて病院を訪れる里井。診断をした医師は、このまま入院するよう里井に勧めた。里井は、会社を休むことには応じたものの、フォーク調査団との会合が終わるまでは社の人間といつでも連絡が取れるよう、自宅療養にしてほしいと懇願する。
医師の了解を得た里井は、車イスに乗ったまま病院を後にした。だが、その姿を、たまたまある入院患者の見舞いでその病院を訪れていた東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)に見られていたことには気づかなかった。
勝枝から連絡を受けた角田は、里井の家を訪れた。勝枝は、角田が里井の心臓病のことを隠していたと知り、怒りをぶつけた。里井は、そんな勝枝を制して、明後日に予定されているフォーク調査団との会合で自分の代わりを務めるよう角田に命じると、発作を起こしたことは誰にも言わないよう念を押す。が、会社に戻った角田は、社長の大門に里井のことを報告してしまう。それを受け、大門は、急きょ壹岐をアメリカから呼び寄せる。
緊急帰国した壹岐は、千代田自動車の常務・小牧徹也(小野武彦)の訪問を受ける。小牧たち千代田自動車の技術部門は、里井の合弁会社設立案に反対していたのだ。
同じころ、角田は、迷いながらも壹岐が帰国したことを里井に報告する。それを聞いて激怒した里井は、病気を押して無理やり出社し、大門と打ち合わせをしていた壹岐にかみつく。合弁会社設立に積極的ではない壹岐がフォーク調査団との会合に出席したら、これまで積み上げてきたものをひっくり返されかねないというのだ。その席で壹岐は、アーリックマンの不可解な行動について言及し、調査の必要性を説いた。しかし里井は、聞く耳を持たなかった。
その夜遅く、壹岐は、千里の自宅に電話する。電話に出たのは千里の元婚約者の丹阿弥泰夫(加藤虎ノ介)だった。壹岐は、男が電話に出たことに驚きながらも、明日の夜、千里と会う約束をする。
壹岐がとある小料理店を訪れると、そこに鮫島の姿があった。すぐに壹岐に気づき、隣席に招く鮫島。そこで鮫島は、フォーク社の話を切り出し、壹岐のようすをうかがった。壹岐は、表情こそ崩さなかったが、鮫島が里井の健康状態までつかんでいることを知り、驚いていた。
翌日、里井は、角田や八束らとともに、フォーク調査団の接待をする。一方、壹岐は、千里に会うためにあるホテルを訪れる。そこで壹岐は、国際ロビイストの竹中莞爾(清水紘冶)に偶然出会う。竹中は、石油部長の兵頭信一良(竹野内豊)の名前を出し、中東の石油に関していい話があるから一度連れてくるよう壹岐に告げた。
壹岐は、竹中を警戒しながら千里の部屋を訪ねた。昨夜、電話に出たのが泰夫だったことを知った壹岐は、ふたりの関係は理解し難い、と千里に告げる。「壹岐さんにあれこれ言われる筋合いはないはずです。私たちは夫婦じゃあるまいし...」と反発したものの、久しぶりの再会にも関わらず口論してしまったことの愚に気づいてすぐに謝る千里。壹岐は、そんな千里を抱きしめた。
あくる日、里井たちは、フォーク調査団との最終会合に臨んだ。そこには、アーリックマンの姿もあった。そのアーリックマンから、合弁会社設立を前向きに検討する、という回答を得た里井は、大門に喜びの報告をした。だが、不安を拭うことができない壹岐は、毎朝新聞社の田原秀雄(阿部サダヲ)と極秘で会うことにする。壹岐は、近畿商事の情報を提供することを約束し、田原から話を聞く。実は、アーリックマンは1週間前から来日しており、田原はずっとその動きを追っていたのだという。その間、アーリックマンと行動を共にしていたのは鮫島だった。
壹岐は、ただちにそのことを大門に報告した。するとそこに角田が飛び込んできた。自由党の田淵幹事長(江守徹)から、大門に聞きたいことがある、という呼び出しの電話があったというのだ。大門は、壹岐を同行させて、田淵の邸宅を訪れるが...。
第13話「喰うか喰われるか」のあらすじ
壹岐正(唐沢寿明)は、社長の大門一三(原田芳雄)に同行して、次期総理の呼び声も高い自由党の幹事長・田淵(江守徹)の邸宅を訪れる。その席で田淵は、千代田自動車と米・フォーク社の提携話を持ち出し、国益絡みの問題に関しては、関係省庁より先に党の了承が必要だ、と言い出す。壹岐は、田淵がこの提携話に一枚噛んでおきたいという思惑で大門を呼び出したと察し、両社の交渉を詰めた上で改めて助言を仰ぎたい、と答えた。
一方、出張から戻った副社長の里井達也(岸辺一徳)は、田淵の一件を知るや否や壹岐を呼び出し、怒りをぶつける。社長である大門が電話1本で駆けつけるなど不見識極まる、というのだ。壹岐は、田淵に会っておきたくて大門を急きたてたのではないか、という里井の疑念を否定すると、オーストラリアに立ち寄ったとされていたフォーク調査団のひとり、アーリックマン(ブレット・コールマン)が、実は東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)と行動をともにしていたことを伝える。
すると里井は、不安材料を並べていたずらに危機感をあおるような戦法は通じない、といって壹岐の言葉に耳を貸さないばかりか、副社長命令で壹岐を提携プロジェクトのメンバーから外してしまう。
心臓の発作で倒れたばかりの里井は、医師から海外出張などを控えるよう助言されていた。だが里井は、妻の勝枝(江波杏子)や腹心である業務本部長の角田保(篠井英介)の反対を押し切って単身デトロイトに向かい、フォーク社との交渉を一気に詰めようとする。ところが、フォーク社のアジア渉外担当・プラット(ニコラス・ペタス)は、そんな里井にいきなり新たな条件を提示した。それは、フォーク社と千代田自動車の間で新たに設立する合弁会社の出資比率をフォーク51%、千代田49%に変更してほしい、というものだった。
帰国した里井は、大門とともに千代田自動車の森社長(大林丈史)、村山専務(田村亮)、小牧常務(小野武彦)と会い、フォーク社側の意向を伝えた。するとそこに、毎朝新聞夕刊の早刷りを手にした角田が飛び込んできた。その一面に掲載されていたのは、フォーク社が東和自動車と提携する意向を東京商事に正式に伝えた、という田原秀雄(阿部サダヲ)が書いたスクープ記事だった。
遅れてやってきた壹岐は、フォーク会長(アレキサンダー・バリ)から届いたばかりの手紙を大門に手渡す。そこには、千代田自動車との交渉を打ち切る、と記されていた。激しいショックを受けた里井は、胸をかきむしるようにしてその場に倒れ、病院に運ばれてしまう。
幸い、里井は一命をとりとめる。だが、職場復帰を果たしても、いままでのような激務は務まらない、というのが医師の診断だった。
ニューヨークに戻った壹岐は、海部要(梶原善)や塙四郎(袴田吉彦)、八束功(山崎樹範)に、いままでの努力に対する感謝の言葉を伝えると同時に、東京に戻ることを報告する。引っ越しの手伝いで壹岐のアパートにやってきた八束は、米自動車産業BIG3の残り2社のどちらかと、千代田自動車をつなぎたいと進言する。海部と塙も同じ思いだった。彼らの思いを受け止めた壹岐は、時期を見て千代田自動車に打診してみる、と答えた。
東京に戻った壹岐は、休む間もなく、大阪で行われた株主総会に出席する。その席で壹岐は、専務取締役に選任された。が、ひとりの男がそれに異議を唱え、壹岐は駐日ソビエト大使館のヤゼフ参事官とシベリア時代からつながっているスパイだ、と叫んで持っていたビラを撒いたため、会場は一時騒然となった。
夕刻、大門の部屋を訪れた壹岐は、怪文書の内容は事実無根であると断言する。そんな壹岐に、大門は、君が次期社長の最有力候補だと告げる。大門は、里井と壹岐の関係を例に、実力のある男は自分との距離が近くなればなるほど、考えもしなかったことを考えるようになるかもしれない、と言い出す。それでも大門は、壹岐にならだまされてもいいと思った、というのだ。それに対して壹岐は、自分が統率者の器でないことは一番よく知っていると返し、いままで通りどこまでも大門の補佐という形で使ってほしい、と願い出る。
東京に戻った壹岐は、谷川正治(橋爪功)と再会する。谷川は、シベリアで命を落とし、遺骨もかえらない戦友たちのために、舞鶴に慰霊碑を建てたい、と壹岐に話す。舞鶴は、シベリア抑留者たちが帰還して、最初に踏んだ日本の地なのだ。
壹岐の娘・直子(多部未華子)とその夫の倫敦(石田卓也)は、もともと壹岐一家が住んでいた家で暮らしていた。直子夫婦は、東京に帰任した壹岐に、この家で一緒に暮らそうと言って誘った。しかし壹岐は、ひとり暮らしにはマンションの方が便利だといってそれを断る。倫敦は、そんな壹岐に再婚を勧めたが、相手にされなかった。
その夜、壹岐のマンションに秋津千里(小雪)がやってくる。一緒に部屋の片づけをした際、千里は、自作の壺が置かれていることに気づく。それは、壹岐がニューヨークでもずっと大切にしていたものだった。
壹岐に言われて、部屋が片付くまでの壺の置き場所を探した千里は、和室の棚の天袋を開けた。するとそこには、小さな仏壇があり、佳子(和久井映見)の位牌が祀られていた。それを見て、急に帰ると言い出す千里。壹岐は、この部屋を借りたのは千里とゆっくり過ごすためでもある、と言って彼女を引きとめた。
するとそこに、息子の誠(斎藤工)からの電話が入る。五井物産でインドネシアの農業プロジェクトに従事している誠が、予定より1週間早く帰国したのだ。誠は、いまから佳子の仏壇にお参りにいきたい、と壹岐に告げた。一瞬、躊躇しながらも、待っている、と答える壹岐。その気持ちを察した千里は「私は、ここにいない方がいいということですよね」と言い残して、部屋を出て行く。
ほどなく、誠が訪ねてくる。久しぶりの再会を果たしたふたりは、酒を酌み交わそうとした。が、その準備をしていた誠は、流しに置かれていたグラスに口紅がついていることに気づき、母の仏壇があるこの部屋で何をしているのだ、と怒って出て行ってしまう。
半年後の昭和45年12月。石油部長の兵頭信一良(竹野内豊)は、イランで石油鉱区が売りに出されるという情報を入手する。それは、兵頭がかねてから目をつけていたサルベスタン鉱区の可能性もあった。サルベスタン鉱区の資料を持って部屋を飛び出した兵頭は、壹岐のもとを訪れ、石油開発実現に向けて力を貸してほしい、と頭を下げた。兵頭の固い決意を知った壹岐は、ただちにイランに向かうよう指示し...。
第14話「百億の賭け」のあらすじ
アメリカ近畿商事から東京本社に帰任した壹岐正(唐沢寿明)は、専務取締役に就任する。それは、壹岐が社長の大門一三(原田芳雄)に次いで、近畿商事のナンバー2になったことを意味していた。
それから半年後の昭和45年12月、イランで石油鉱区が売りに出されるという情報をつかんだ石油部長の兵頭信一良(竹野内豊)は、石油開発を手がけたいと壹岐に直訴する。今回、売りに出される鉱区は、兵頭が以前から目をつけ、情報収集を続けていたサルベスタン鉱区である可能性もあるという。石油開発にすべてを賭けようとしている兵頭の強い決意を知った壹岐は、ただちにイランに向かうよう指示した。同時に壹岐は、イランへの経済協力として同国の液化天然ガスを関東電力に導入させるべく動き始める。
大門を訪ねた壹岐は、さっそく石油開発の件を切り出した。石油開発にかかる費用はおよそ200億円。石油が出れば1000億円以上の利益が見込まれていた。開発費用は、日本石油公社から最大で50パーセント支援してもらうことができるという。開発に失敗した場合でもその返済は免除されるというものの、石油が出なければ100億円もの費用が無駄になる。大門は、その場での決断を避けた。
一方、兵頭は、近畿商事テヘラン事務所を拠点にして情報収集を開始する。だが、売りに出されるのがどこの鉱区なのか、つかむことができなかった。焦りを隠せない兵頭は、イラン石油公社の筆頭理事に会うために、以前から何度か接触してきていたブローカーとコンタクトを取る。しかし、兵頭のミスから、その計画も失敗に終わってしまう。
壹岐は、第三次中東戦争の際にも協力を仰いだ国際ロビイストの竹中莞爾(清水紘冶)の事務所を訪ねる。そこで壹岐は、リビアの元石油大臣で、現在は石油コンサルタントをしているハバシュという人物が今回イランで売り出される鉱区を知っているとの情報を得る。壹岐は、兵頭に連絡し、ハバシュが滞在しているパリに向かうよう命じた。
パリに到着した兵頭は、ハバシュと会う約束を取り付け、滞在先のホテルを訪れる。しかしハバシュは、多忙を理由に兵頭と会おうとはしなかった。そんな兵頭の前に、黄紅子(天海祐希)が現れる。兵頭に気づいた紅子は、乗馬クラブに行く約束があるからいまは時間がないが、今夜ホテルのバーで待っている、と勝手に約束して去っていく。
その夜、兵頭は、約束通りホテルのバーで紅子と再会する。兵頭の活躍で近畿商事の石油部門が業績を伸ばしていることを聞きつけていた紅子は、彼がハバシュに会いに来たことも見抜いていた。
すると、紅子の知り合いらしい外国人が声をかけてきた。席を立って会社に戻ろうとした兵頭に、紅子はその男を紹介した。実はその男こそ、ハバシュだったのだ。
ハバシュからの情報で、今回売りに出されるのが予想通りサルベスタン鉱区であることをつかんだ兵頭は、壹岐に報告した。それを受け、大門の了承を得た壹岐は、日本石油公社総裁・貝塚道生(段田安則)に会いに行く。
10年ぶりに貝塚と再会した壹岐は、サルベスタン鉱区の国際入札に際し、力添えを頼んだ。壹岐が政治家への根回しをせずに直接相談に来たことを知った貝塚は、機嫌を良くし、自分の裁量で面倒を見る、と壹岐に約束した。その夜、家に戻った壹岐は、秋津千里(小雪)に電話をする。千里は、日本陶芸展に出品することになり、多忙なようすだった。壹岐は、誠(斎藤工)がマンションに来たときの件を詫びると、東京に来るときは連絡してほしい、と千里に告げた。
そんな中、東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)が貝塚のもとを訪れた。東京商事もサルベスタン鉱区を狙っていたのだ。貝塚の話から、サルベスタン鉱区に関してはすでに近畿商事が支持を取り付けていることを知った鮫島は、五菱商事専務の神尾(名高達男)、五井物産の専務・有田(大門正明)を呼び出し、共闘を呼び掛けた。
自宅療養中だった副社長の里井達也(岸部一徳)は、業務本部長の角田保(篠井英介)から石油開発の話を聞かされる。里井は、事後報告だったことに腹を立て、今後は詳細を報告することを角田に約束させる。
壹岐は、入札準備のために貝塚に連絡するが、外出中とのことで会うことができなかった。その夜、帰宅した壹岐が食事をとっていると、そこに千里が訪ねてきた。「会いたかった...」。壹岐に抱きしめられながら、千里はそうつぶやいた。
あくる朝、壹岐は、千里が用意した朝食をとっていた。そこにやってきたのは鮫島直子(多部未華子)だった。母の仏壇にお供えを持ってきたのだという。壹岐は、そんな直子に千里を紹介し、「つい今さっき、見えられたんだ」と言ってその場を取り繕おうとした。直子が帰った後、無言で食事をとる壹岐と千里。次に誰かが来たら今度はどう取り繕うのか、という千里の言葉が壹岐の胸に突き刺さった。
数日後、貝塚から連絡を受けた壹岐は、日本石油公社に向かった。だが、通された会議室には、すでに神尾と有田が待っており、ほどなく鮫島も現れた。そこにやってきた貝塚は、サルベスタン鉱区の国際入札は、五菱商事、五井物産、東京商事、近畿商事の四社連合で臨むと言い出す。しかもその出資比率は、他社が一律30%であるのに対し、近畿商事だけが10%という屈辱的なものだった。壹岐は、激しい怒りに震えて...。
第15話「邪魔者は消えろ!」のあらすじ
石油開発に乗り出した壹岐正(唐沢寿明)と兵頭信一良(竹野内豊)は、イランのサルベスタン鉱区が売りに出されるという情報をどの商社よりも先に入手した。その情報を元に、壹岐たちは日本石油公社総裁の貝塚道生(段田安則)に会い、近畿商事の単独入札と、開発資金援助の内諾を得る。それを知った東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)は、近畿商事の単独入札を阻止するために五菱商事、五井物産と手を組み、貝塚に圧力をかけた。その結果、サルベスタン鉱区は、近畿商事、東京商事、五菱商事、五井物産の四社連合で入札することになった。だが、他社がそれぞれ30%の出資比率であるのに対し、近畿商事だけが10%という屈辱的な決定が下されてしまう。
貝塚の決定に激怒した壹岐は、日本石油公社とは手を組まずに今回の入札に挑むことを決意。技術力と資本力を持つ海外の石油開発会社を探した壹岐たちが目を付けたのは、米の独立系石油会社・オリオン・オイル社だった。
ある夜、クラブ『ル・ボア』を訪れた壹岐は、黄紅子(天海祐希)と再会する。近畿商事が石油ビジネスに乗り出すという情報をすでに聞きつけていた紅子は、親交があるイランの前王妃からも、近畿商事について尋ねられたという。その席で、紅子がオリオン・オイル社のリーガン会長(チャールズ・グラバー)と面識があることを知った壹岐は、仲介役を頼んだ。それを引き受けた紅子は、来月、リーガン会長が夫の黄乾臣(石橋蓮司)に会いに来る際に、兵頭とともにジャカルタに来るよう告げる。
一方、仕事に復帰した副社長の里井達也(岸部一徳)は、社長の大門一三(原田芳雄)から石油開発の件を相談される。里井は、日本石油公社グループから離脱して海外の会社と組むのは非常識だとし、失敗すれば会社の屋台骨を揺るがし、大門の進退にもかかわる、と主張する。
ジャカルタの黄邸を訪れた壹岐と兵頭は、リーガン会長に会い、サルベスタン鉱区入札に関し、パートナーシップを結ぶ約束を取り付ける。次の問題は、100億円に及ぶ開発資金の確保だった。壹岐たちは、社内の反対勢力を抑えるために極秘で動き始めた。壹岐たちは、財務本部長の武蔵稔(中原丈雄)、鉄鋼担当専務の堂本重人(浅沼晋平)をシンガポールに呼び、賛同を得る。里井の命令を受けて壹岐たちの動向を探っていた業務本部長の角田保(篠井英介)は、そうした動きを掴むことができずにいた。
帰国早々、壹岐は、アメリカ近畿商事時代の部下・海部要(梶原善)と、壹岐のアパートのメイドを務めていたハル江(吉行和子)の訪問を受ける。海部は出張で、ハル江はたまたま里帰りでともに帰国していたのだという。そこにやってきた角田は、わざわざ妻に作らせた和食を壹岐に届けにくる。壹岐は、礼を言ってそれを受け取った。
壹岐たちがハル江の作った夕食をとっていると、秋津千里(小雪)から電話が入る。千里は、日本陶芸展の打ち合わせで上京していた。その際、壹岐のアパートを訪ねる約束をする千里。
電話の相手がNYのアパートに泊まった女性だと察したハル江は、海部を連れて壹岐の部屋を後にする。そこに再び千里から電話が入る。ガス窯が故障したので夜行で京都に戻らなければならないため、壹岐のもとに行けなくなった、という電話だった。それを聞いて、ガス窯の故障くらいで帰ることはない、と言ってしまう壹岐。千里は、そんな壹岐に、自分はいつも仕事を優先するのに私の仕事には理解がない、といって電話を切ってしまう。
あくる日、近畿商事では、社長の大門以下、役員たちが顔をそろえ、経営会議が開かれる。議題はもちろん石油開発とオリオン・オイルとの提携についてだった。会議は、予想通り壹岐と里井が激しく衝突した。が、堂本や武蔵だけでなく、角田までもが壹岐を支持する。激高した里井は、真珠湾攻撃の話まで持ち出し、壹岐を非難した。それに対して壹岐は、だからこそかつて武力で得ようとした石油を日本の将来のために平和な形で得ようとしている、と返す。そうしたやり取りを聞いていた大門は、リスクのないところには利益も繁栄もない、として、社運をかけて石油開発に取り組むことを決意する。
会議の後、壹岐は、大門にあることを頼む。それは、里井の排除だった。あくる日、里井を呼び出した大門は、タクボ工業の社長に就任し、その経営を立て直すよう命じた。突然の話に混乱し、壹岐に騙されないでください、などと声を荒げる里井。大門は、そんな里井に、遺言状の話を打ち明ける。ここ10年の間、大門は、万が一自分の身に何かあった場合のことを考え、毎年元旦に遺言状をしたためていたのだという。その10回とも、後継者には里井の名前を書いた、というのだ。もしこの内示が受けられないのなら辞めてもらうしかない――大門はそう言って社長室を後にした。ひとり残された里井はただ泣き崩れ...。
大門が壹岐を同行させて向かったのは、自由党幹事長・田淵(江守徹)の邸宅だった。そこで大門たちは、近畿商事がオリオン・オイル社と組んでイラン・サルベスタン鉱区の国際入札に参加することを報告し、田淵にその後ろ盾を頼んだ。
そんな中、壹岐は、谷川正治(橋爪功)とともに、舞鶴の五老ヶ岳を訪れる。谷川は、シベリア抑留者が帰還した舞鶴港を見渡せるこの場所に、シベリアで死んでいった仲間たちのための慰霊碑を建てようと決意していた。そこで壹岐は、最後の仕事として石油開発を手がけることになったと谷川に報告する。石油が国家の生命線であることを知る谷川は、戦争で亡くなった者のために必ずやり遂げるよう、壹岐を激励した。
ほどなく、近畿商事が日本石油公社グループを離脱した件が新聞各紙で報じられた。が、その内容は近畿商事を厳しく非難するものばかりだった。
第16話「地獄からの招待状」のあらすじ
石油開発に乗り出した壹岐正(唐沢寿明)と兵頭信一良(竹野内豊)は、イラン・サルベスタン鉱区の国際入札に際し、商社連合の日本石油公社グループから離脱し、米独立系石油会社オリオン・オイルと組むことを決意する。
社長の大門一三(原田芳雄)は、反対派だった副社長の里井達也(岸部一徳)を関連会社に出向させた。壹岐の要望を受けての決断だった。さらに壹岐は、大門とともに自由党幹事長の田淵(江守徹)を訪ね、近畿商事の後ろ盾になってもらいたいと依頼した。石油利権を握る政治家たちと組んでいる日本石油公社総裁の貝塚道生(段田安則)や東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)らによる妨害工作に対抗するためだった。
ところがその矢先、近畿商事がオリオン・オイル社と組んで国際入札に参加すること批判する記事が新聞各紙に掲載される。日本石油公社グループからの離脱は国益を無視した行為だというのだ。それを受け、貝塚は、近畿商事の行動は利益を独占しようというものであり極めて遺憾だとのコメントを発表する。
一方、兵頭は、近畿商事テヘラン事務所を拠点に、国際入札の決定権を持つイラン国王とその周辺の人物に関する情報収集を続けていた。国王の決断に影響力を持つ側近とコンタクトを取り、各国の入札価格等の情報を得ることが最重要任務だった。
近畿商事への非難が高まる中、取引先からのは、オリオン・オイルと組むなら今後の取引を白紙に戻すという電話が相次いだ。壹岐は、オリオン・オイルとの入札が事実だと認めた上で、今回の決断はあくまでも日本石油公社グループが入札できなかった場合の安全弁だと取引先に説明するよう社内各所に指示する。
そんな折、壹岐の前に、元近畿商事社員の小出宏(松重豊)が現れる。小出は、壹岐の部下として自衛隊の2次防FX受注に関わり、機密漏えいの疑いで逮捕された後、千代田自動車が開発を進めていた新車115タイガーの情報を買い取いとってもらうための仲介をしてほしいと接近してくるなど、壹岐にとって何かと因縁のある相手だった。小出は、壹岐のことが心配で訪ねてきたとうそぶくと、近畿商事が日本石油公社グループに戻れるよう仲介してくれる人物が待っている、と告げる。その相手とは、大物総会屋の林田正道(梅野泰靖)だった。
林田の屋敷を訪れた壹岐は、オリオン・オイルと組んだのは国益を考えた上でのことだと説明した。それに対して林田は、佐橋総理は自分の友人だから石油公社グループに戻れるよう力になりたいと告げた。しかし壹岐は、その申し出を受けようとはしなかった。
近畿商事への圧力はさらに強まっていった。シンジケート・ローン認可の保留、近畿商事が輸入している豚肉に対する関税法違反の疑い、マニラの肥料工場に対する許可の取り消しなど、関係省庁がさまざまな形で近畿商事にプレッシャーをかけてきたのだ。さらに、壹岐がソ連と密接な関係にあるとする怪文書まで出回っていた。
大門のもとに最後の挨拶にやってきた里井は、近畿商事に対する一連の動きは壹岐の暴走が招いた結果だと言い放つ。そして里井は、いまに壹岐が大門を追い落とすことになる、と忠告し、近畿商事を去っていく。
壹岐は、京都に向かった。韓国・光星物産の会長を務める李錫源(榎木孝明)から、京都にいるから会えないかと電話があったのだ。
壹岐は、李に会う前に、秋津千里(小雪)の兄で、比叡山で修業をしている清輝(佐々木蔵之介)を訪ねる。その静かな雰囲気に、久しぶりに心の安らぎを感じた壹岐は、このような世界で生きることができたらと思うが、自分はこれからも汚れきった世界で生きて行くしかない、と清輝に言った。清輝は、そんな壹岐に、『世間の法に染まらざること、蓮華の水にあるが如し』という法華経の教えを話す。「蓮が、泥沼の中にあっても美しい花を咲かせるように、人は汚れた俗世間を生きていても、それに染まらず、清廉な生き方を貫くことができる、という意味です」。清輝は、そう壹岐に告げた。
その夜、壹岐は、李と食事を共にする。壹岐が、国際入札の件でバッシングを受けていることを知る李は、ある情報を壹岐に伝えた。それは、イラン国王に最も影響力を持つと思われる、ひとりの医師のことだった。李は、駐米大使をしているときに、イラン国王の側に、影のようにぴったりとついていたその男を見たことがあるのだという。しかもその男は、重要な席には必ず同席するのに、一般的なパーティーの席には決して顔を出さないというのだ。
李と別れた壹岐は、千里の家を訪ねた。そこで壹岐は、清輝に会ってきたことを伝えると、千里の仕事が落ち着いたら、直子(多部未華子)の家族と一緒に食事をしよう、と彼女に告げた。
東京に戻った壹岐は、毎朝新聞の記者・田原秀雄(阿部サダヲ)から取材を申し込まれる。田原は、近畿商事に対するバッシング記事には関与せず、壹岐の本当の狙いを追い求めていた。壹岐は、今回の入札は日本石油公社グループが落札できなかった場合の安全弁であることを田原に説明した。田原から、もし近畿商事とオリオン・オイルが一番札をとり、二番札が日本石油公社グループだったらどうするつもりなのか、と問われた壹岐は、公社グループに譲る、と返答した。
やがて、李が言っていたイラン国王の側近はドクター・フォルジという男であることが判明する。兵頭からの情報で、ドクター・フォルジはイラン前王妃からも信頼されていると知った壹岐は、黄紅子(天海祐希)の言葉を思い出す。紅子は、友人であるイラン前王妃から、近畿商事がどういう会社か尋ねられたと言っていたのだ。
紅子が帰国中だと知った壹岐は、クラブ『ル・ボア』で彼女に会った。そこで壹岐は、近畿商事とドクター・フォルジの仲介をしてもらえるよう、イラン前王妃に頼んでほしい、と紅子に依頼する。紅子は、それを了承すると、その前王妃も出資者に名を連ねるスイスの観光事業を近畿商事の海外支店にバックアップしてもらいたい、と壹岐に頼んだ。
同じころ、鮫島は、五菱商事専務の神尾(名高達男)から、サルベスタン鉱区に関する各社の入札予想価格を手に入れる。それによれば、1位は西ドイツのデミネックス社で、2位が日本石油公社グループ、近畿商事・オリオン・オイルは3位だった。今回の一番札は、入札価格が一番高いだけでなく、イランに対する経済協力も考慮される。鮫島は、確実にサルベスタン鉱区を落札するために、佐橋総理に会ってほしい、と神尾に頼んだ。大企業のトップを集めた経済ミッションをイランに派遣するためだった。
数日後、兵頭はベイルートで紅子と合流し、イラン前王妃からドクター・フォルジに宛てた親書を受け取る。紅子によれば、フォルジは火曜日の夜だけ王宮を出て家で過ごすのだという。それを聞いた兵頭は、ただちにテヘランに向かい、フォルジの家を訪れた。
兵頭は、顔を出した執事に親書を見せ、フォルジに会いたいと告げた。しかし、フォルジは誰にも会わないという。諦めきれない兵頭は、家の中に聞こえるように、石油開発への思いを叫んだ。
入札まであと10日。近畿商事テヘラン事務所にも、日本石油公社グループが経済ミッションを送り込むとの情報が伝わった。焦りを隠せない兵頭。するとそこに、オリオン・オイル社からの封筒が届く。が、その中に入っていたのは、座席指定のある映画のチケット1枚だけだった。それを見た兵頭は、何かを感じ、映画館へと向かった。
兵頭が指定された席に座ると、そこに売り子がやってきた。仕方なく、新聞紙を折った袋に入っている向日葵の種を買う兵頭。ほどなく、映画が始まった。すると、突然後ろの席から「向日葵の種は嫌いか?」と男が話しかけてきた。フォルジの執事だった。執事は、フォルジが会ってもいいと言っているが条件がある、といって、兵頭が手にしている向日葵の種を指差した。
緊急帰国した兵頭は、フォルジが会ってくれることになった、と壹岐に伝えた。フォルジが出した条件とは、石油開発プロジェクトのトップである壹岐を連れてモスクワに来ることだった。向日葵の種が入っていた新聞紙には、イラン国王のモスクワ訪問日程が掲載されていたのだ。だが、モスクワという言葉を聞いた壹岐は顔をこわばらせた。壹岐の脳裏に、シベリア抑留の悪夢がよみがえった。
壹岐は、モスクワには行かない、というと、別の手段を考えようと兵頭に告げた。そんな壹岐の態度に納得がいかず、日ごろから口にしている国益とは随分ご都合主義だ、などとかみつく兵頭。激高した壹岐は、極北の流刑地で、囚人番号を押されて重労働を強いられた人間の気持ちがわかるのか、と叫んだ。
ひと晩考え込んでいた壹岐は、翌朝、谷川正治(橋爪功)のもとを訪ねる。そこで壹岐は、モスクワに行くことになったと谷川に告げた。谷川は、日本のためになると信じたのならどんな困難があってもやり抜くことだと壹岐に言葉をかけた。続けて谷川は、例えビザが発給されてもシベリア抑留者だった壹岐には監視がつくであろうとことを予見し、身辺には注意を払うよう助言した。
マンションに戻った壹岐は、直子にもモスクワ行きを打ち明ける。直子は、もしものことがあったらどうするのか、と猛反対した。壹岐は、そんな直子をなだめると、モスクワ行きのことは夫の倫敦(石田卓也)にも言わないよう念を押した。
鮫島たちが経済ミッションの一団を連れてイランを訪問しているころ、壹岐と兵頭は、モスクワに向かって旅立ち...。
第17話「暗号と密約」のあらすじ
石油開発に乗り出した壹岐正(唐沢寿明)と兵頭信一良(竹野内豊)は、イラン・サルベスタン鉱区の国際入札に際し、ライバルとなる他社の入札価格に関する情報を入手するために、イラン国王の側近である医師ドクター・フォルジ(アルフレド・ベナベント)に接触する。壹岐たちは、イラン前王妃と親交が深い黄紅子(天海祐希)の協力でフォルジと面会の約束を取り付けた。だが、フォルジが面会の場所に指定してきたのは、ソ連の首都モスクワだった。シベリアで11年間も過酷な抑留生活を送った壹岐にとっては、二度と足を踏み入れたくない国だった。が、覚悟を決めた壹岐は、娘の直子(多部未華子)の反対を押し切ってモスクワへと向かった。
一方、五菱商事、五井物産とともに日本石油公社グループとしてサルベスタン鉱区の国際入札に臨む東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)は、日本のトップ企業を集めた経済ミッションをイランに派遣し、同国政府へのアピールに成功していた。そんな折、兵頭がテヘランから姿を消しているという情報を得た鮫島は、近畿商事が何らかの行動を起こしているのではないかと不審を抱く。
谷川正治(橋爪功)は、壹岐の家を訪ねた。谷川は、ソ連に向かった父を心配する直子に、朔風会にも帰国後にソ連を訪問したメンバーが4人いる、と話す。続けて谷川は、自分たちがシベリアにいたのは20年も前のことで、今回は正式なビザを発給されているのだから心配することはない、と言って直子を安心させようとした。
壹岐たちは、ドクター・フォルジの代理人であるソ連医学アカデミーのドクター・ペトロシャンの別荘を訪れた。そこで壹岐たちは、フォルジがイラン・イスファハンの名門一族の出身であること、内乱があり、当時10歳だったフォルジの目の前で一族が殺されるという過酷な体験をしていることを知る。ほどなく、別荘にやってきたファルジと面会を果たした壹岐は、敢えてイスファハンのことを口にした。するとフォルジは、差しだそうとしていた手を引っ込めて、シベリアには何年いたのか、と返す。思い出したくない話を敢えて口にしたのは、自分がどれほどの覚悟でソ連に来たのか、わかってもらうためだった。
鮫島は、テヘランにあるホテルのメイドを買収して兵頭の部屋に侵入し、彼がモスクワに向かっていることを知る。鮫島は、義理の娘でもある直子に電話を入れると、壹岐の身に何かあったかのような口ぶりで騙し、モスクワのことを聞きだした。近畿商事側がイラン国王の側近と接触したことを確信した鮫島は、五菱商事の神尾(名高達男)や五井物産の有田(大門正明)に対して、すでに取り決めた入札価格に500万ドル上乗せすべきだと訴える。
同じころ、秋津千里(小雪)は、比叡山を訪れ、兄・清輝(佐々木蔵之介)に会っていた。千里は、日本陶芸展が終わったら、陶芸のルーツをたどるためにシルクロードに行くことを清輝に告げる。
帰国した壹岐は、社長の大門一三(原田芳雄)に、入札価格の情報と引き換えとしてフォルジから提示された条件を伝える。フォルジが望んでいるのは、アメリカ軍が所有している戦闘機F14だった。壹岐は、ニクソン米大統領と太いパイプを持つカプシ・コーラのシードル会長にその橋渡しをしてもらう約束を取り付けていた。
入札2日前、フォルジの邸宅を訪れた兵頭は、そこで1冊の詩集を手渡される。それが、処方箋なのだという。
あくる夜、近畿商事のテヘラン事務所に、フォルジから電話が入った。そこで、ゆっくりと2編の詩を読みあげるフォルジ。兵頭とともにそれを聞きながら書き留めた東山(小市慢太郎)は、詩集の中から、フォルジが読んだ詩を探した。ふたつの詩が掲載されていたのは36ページと105ページ――入札価格の最高値は、36×105で3780万ドルという意味だった。
連絡を受けた壹岐は、大門にその価格を報告した。大門は、上限として取り決めた3600万ドルを超えていることに難色を示した。壹岐は、そんな大門に、第四次中東戦争勃発の可能性があることを告げ、上限を4000万ドルまで引き上げることを了承させる。
入札当日。オリオン・オイル社のリーガン会長(チャールズ・グラバー)とともに、イラン石油公社を訪れた兵頭は、筆頭理事のドクター・キア(アハマド・アリ)に入札価格を書きこんだ書類を手渡す。近畿商事とオリオン・オイル社が提示した価格は3990万ドルだった。
帰り際、兵頭たちは、入札にやってきた鮫島ら日本石油公社グループとすれ違った。石油公社グループが、入札締め切りの5分前にやってきたことに、兵頭は不安を隠せなかった。リーガンは、そんな兵頭に、我々はやるべきことはすべてやった、と声をかけた。
あくる日、兵頭は、電話でイラン石油公社に呼び出される。リーガン会長とともにイラン石油公社に向かう兵頭。そこでドクター・キアは、近畿商事、オリオン・オイルグループが一番札であることを決定した、とふたりに告げた。リーガンと固い握手を交わし、抱き合って喜ぶ兵頭。その目には涙が滲んでいた。
その知らせは、すぐに東京本社の大門と壹岐にも伝えられた。入札価格の第2位は西ドイツのデミネックス社で3950万ドル、日本石油公社グループは3900万ドルで第3位とのことだった。
その夜、壹岐は、毎朝新聞の記者・田原秀雄(阿部サダヲ)に連絡を入れて呼び出し、イラン・サルベスタン鉱区を落札したと報告する。田原は席を立つと、猛然と走りだした。
あくる日、毎朝新聞の一面には、近畿商事の快挙を伝える記事が掲載された。谷川も、千里も、その記事を読んで安堵の表情を浮かべていた。
壹岐は、大門とともに、日本石油公社を訪ね、貝塚に今後の支援を願い出た。だが、貝塚は、すでに総裁更迭の内示を受けていた。
帰社した大門と壹岐は、集まっていた新聞記者たちに囲まれた。遠くからその姿を見つめていたのは小出宏(松重豊)だった。近畿商事を後にした小出は、路地裏のゴミ捨て場で狂ったように暴れると、そのまま倒れこんだ。
その夜、壹岐は、直子のもとを訪れる。そこで直子は、鮫島からの電話の件を壹岐に話した。するとそこに、いきなり鮫島が現れる。鮫島は、少しも悪びれたようすもなく勝手に家の中に入っていくと、これからは公私ともども壹岐と付き合わせてもらう、と言い出す。日本石油公社の山下新総裁が近畿商事支援を決めたことを受け、東京商事もサルベスタン鉱区の採掘に資本参加するつもりだというのだ。
別の日、壹岐たちはイラン側との調印式に向かうため、羽田空港に向かった。そこで千里の姿を見かけた壹岐は、彼女がシルクロードに行くことを知る。壹岐は、そんな千里にマンションの鍵を手渡し、帰国したらまっすぐに来てくれ、と告げる。
自由党の田淵幹事長(江守徹)は、友人でもある国際ロビイスト・竹中莞爾(清水紘冶)と能を楽しんでいた。竹中は、近畿商事がサルベスタン鉱区を落札したことで、日本石油公社をバックアップしていた佐橋から、田淵に総理大臣の座が渡る日も近いと見ていた。「それにしても、あの壹岐正は、面白そうな男だな。長い付き合いになりそうだ」。田淵は、そうつぶやいた。
テヘランを訪れた壹岐たちは、無事、調印式を済ませた。「サルベスタンは、壹岐正とって、第二のシベリアになるだろう」とドクター・フォルジは予言した。その言葉通り、石油ビジネスにおける本当の戦いはこれからだった...。
第18話「汚れた英雄」のあらすじ
石油開発に乗り出した近畿商事は、アメリカの独立系石油開発会社オリオン・オイル社と組んでイランのサルベスタン鉱区を落札した。日本石油公社の支援を得た近畿商事は、東京商事からも5%の出資を受け、石油の掘削工事を開始した。
落札から3年8ヵ月後、副社長となった壹岐正(唐沢寿明)は、アメリカ近畿商事時代の部下・塙四郎(袴田吉彦)を呼び寄せて秘書にする。人事、総務、業務、海外事業の四部門を掌握した壹岐は、事実上、近畿商事の経営全般を指揮する権限を有するようになっていた。一方、石油部長だった兵頭信一良(竹野内豊)は、石油、ガスなどを統括するエネルギー部門の担当常務に昇進していた。
サルベスタンではすでに3本の井戸を掘っていたが、石油は一滴も出なかった。現在、四号井<よんごうせい>の掘削を進めているものの、これまでに合計50億円もの掘削費が泡と消えていた。
その矢先、四号井が深さ4750フィートで逸泥を起こし、いつ暴噴するかわからない危険な状態に陥っているとの連絡が入る。逸泥とは、坑井内の循環泥水が地層中の空洞や亀裂、浸透性の高い地層などによって失われる現象をいい、坑壁の崩壊や掘管の噴出といった重大なトラブルを引き起こす。ただちに現地に向かった兵頭は、石油があると思われる深度5000〜8000フィートまで掘り進める方法を模索した。だが、これ以上掘るのは不可能だという現場責任者の判断から、兵頭も四号井の廃坑を決断するほかはなかった。
四号井の廃坑を受け、日本石油公社の山下総裁(矢島健一)は近畿商事に対する支援の打ち切りを決定する。壹岐は、四号井で良好な貯留層の存在が認められたことから、社長の大門一三(原田芳雄)に五号井の掘削を願い出た。しかし大門は、公社が手を引いた以上資金繰りができないとして、サルベスタンから撤退すると言い出す。壹岐は、かつての大門なら五号井を掘るといったはずだ、と返した。その言葉に激怒した大門は、自分の正当性ばかり主張して現実から目をそらすな、と怒鳴った。
サルベスタンの開発を諦めきれなかった壹岐は、中東の石油事情に詳しい国際ロビイストの竹中莞爾(清水紘冶)を訪ねた。竹中は、内閣総理大臣の田淵(江守徹)とじっこんの間柄だった。そこで、竹中から田淵に、イラン国王がサルベスタンの開発続行を強く望んでいることを伝えてもらい、政府から日本石油公社に支援再開を指示させようという目論見だった。
そんな折、壹岐は、業務本部長の角田保(篠井英介)から、大門が綿花相場でかなりの額の損失を出しているという話を聞かされる。しかも、具体的な損失額は大門が指示を出している綿花部長の伊原(上杉祥三)以外、誰も知らないのだという。
役員会議に出席した壹岐は、大門に綿花相場の件を切り出した。しかし大門は、自分が全責任を持つ、と言って何も説明しようとはしなかった。その席で大門は、イランから撤退することを宣言した。壹岐は、公社の支援を得られるよう努力していることを伝え、結論を出すのは待ってほしいと願い出る。しかし大門は、その具体策を提示しようとはしない壹岐に苛立っていた。
壹岐と大門の緊迫したやり取りを目の当たりにした角田は、タクボ工業の社長となった里井達也(岸部一徳)に連絡した。里井に会った角田は、壹岐が五号井の採掘を進めようとしていること、大門が綿花相場に入れ込んでいることを報告した。
秋津千里(小雪)は、壹岐のマンションを訪ねていた。壹岐とともに、直子(多部未華子)夫婦と一緒に食事をするためだった。そこに、いきなり鮫島辰三(遠藤憲一)がやってきた。千里に気づいた鮫島は、壹岐との関係を勘繰るような無礼な態度を取りながら、東京商事もサルベスタンから降りることにした、と壹岐に告げた。
鮫島が帰った直後、竹中から電話が入った。田淵が、壹岐の願いを受け入れてくれる、という連絡だった。ただちにイラン国王側と話をつけなければならなくなった壹岐は、直子たちとの食事会が延期になってしまうことを千里に詫びた。
壹岐は、兵頭とともにテヘランのドクター・フォルジ(アルフレド・ベナベント)を訪ね、イラン国王の力を借りたいと申し出る。さらに壹岐は、アメリカ近畿商事の海部要(梶原善)を日本に呼び寄せた。アメリカ近畿商事時代に為替差益などで得た利益をプールしていた壹岐は、その金1000万円を海部に届けさせたのだ。それは、田淵に渡すための金だった。
さっそく田淵邸を訪れた壹岐は、田淵が飼っている鶴のために配合飼料を用意してきた、といって箱を手渡した。箱の中に敷き詰められた飼料の下には、海部が持ってきた1000万円が隠されていた。
その夜、壹岐は、谷川正治(橋爪功)を訪ねた。谷川は、明日、シベリアで命を落とした抑留者のために慰霊碑を建てる件で、再び舞鶴に行くのだという。酔いつぶれてしまった壹岐は、あくる朝、谷川に見送ってもらう。谷川は、壹岐のことを心配しているようすだった。
政府からの強い要望で、日本石油公社は近畿商事への支援継続を決定する。壹岐からその報告を受けた大門は、最後の1本だと念を押して、五号井の採掘を許可した。社長室を後にしようとして立ち止まった壹岐は、このままでは命取りになりかねない綿花相場の件を早急に終わらせるよう、改めて大門に進言した。
壹岐は、兵頭とともにサルベスタンに向かった。五号井の採掘開始に立ち会うためだった。採掘が始まって間もなく、東京から壹岐宛てのテレックスが入る。谷川が死んだという知らせだった。緊急帰国した壹岐は、その足で葬儀場に向かい、谷川と最後の対面を果たす。谷川は、疲れが重なりカゼをこじらせていたにも関わらず朔風会の会報作りなどを続け、肺炎を起こしたのだという。誰よりも自分のことを理解してくれていた谷川の死に、壹岐は深い悲しみを味わっていた。
同じころ、大門は、綿花相場の損失が45億円に膨らんでいることを知る。いつか壹岐が大門を追い落とす、という里井の言葉を思い出す大門。里井を呼び出した大門は、そこで彼に、近畿商事に戻ってこないか、と持ちかけた。それに対して里井は、壹岐を社外に出すのなら戻る、という条件を出す。
そんな中、採掘が続けられていたサルベスタンの五号井でガス暴噴が発生し...。
最終回のあらすじ(ネタバレ注意)
※フジテレビHPより引用